仕事をスムーズに進めるために、社内の人間関係の構築は重要です。そういうと、つい、上司や先輩に目が向いてしまいがちですが、年下の味方もつくっておくべきでしょう。
ただ、そこには「世代間ギャップ」があります。どのように接するべきか? 先輩風を吹かせて接することが論外であることは、あらためて言うことでもありません。
「きみ、何年入社?」は上から目線
とはいえ、本人にその気はなくても、知らず知らず、無意識のうちに、そこに上下関係を持ち込んでしまうことがあります。こうした「無意識マウンティング」こそ、要注意です。
会社に勤めている人は少なからず、入社年次や年齢をかなり意識し、大事にしています。年次が上の人、年齢が上の人に対して「立てる」感覚を持っている。これは自分が会社組織を離れてみて、より感じるようになりました。
その意識をすべて否定するつもりはありません。年次や年齢が上の人には、丁寧に敬意を持って接するのは大切なことです。問題は、自分が年次的にも年齢的にも上で、仕事を頼む相手が自分よりも後輩、年齢も下の場合です。
日本人はコミュニケーションがそれほど取れていない相手と物事を進めるとき、無意識のうちに年齢、経歴、役職の上下関係を確認したがります。
「●●さんって、何年生まれでしたっけ?」
「僕は1997年入社だけど、きみは何年入社だっけ?」
年次や年齢の上下を確認されただけで、下に置かれた側はプレッシャーを感じます。上の人にそのつもりがなくても、「俺が上なんだから、言うことを聞け」と社内のヒエラルキーを感じることでしょう。
あるいは直接的にヒエラルキーを感じさせる言葉ではなくても、ヒエラルキーをほのめかす言葉を使ってしまう人がいます。たとえば、「主任の立場から言わせていただくと......(君は平社員だよね)」などの発言によって、相手は確実に自分が下の立場にいることを意識せざるを得なくなります。
自分が下の立場にいることがわかったとき、下の人にとっては上の人の言葉がすべて「上から目線」に感じられますし、そう捉えられてしまうと、相手は「不快な関係」と思い込んでしまったり、その人から個人的にお願いされたという感覚にはなれず、上下関係で命令されたと感じてしまったりします。
そうなると、「断る」という選択肢はなくなり、自ら積極的に関わりたいという思いもなくなってしまいます。
有能な後輩が親近感を覚える接し方とは?
それでは、年下の後輩たちを味方につけたいときは、どう接すればいいのでしょうか――。味方になってもらいたいほど有能な年下に限って生意気なことがあります。仕事ぶりにも自信が溢れており、先輩に対しても堂々とした姿勢であったりします。そうした姿勢が、つい生意気に思ってしまうのかもしれません。
こうした年下に上から目線で迫ったら、味方にはなってくれないのは明らかですが、ご機嫌をとろうとして極端に卑屈な姿勢に出るのも嫌います。
では、どうしたらいいのか? それは「フォロワーシップ」を見せることが、重要なポイントとなります。人材育成やマネジメントを考えるうえで、最近注目を集めているキーワードのひとつです。
ちなみに、リーダーシップはリード(Lead)するという動詞からきた言葉で、組織をリードすること。フォロワーは、フォロー(Follow)するという言葉に由来する追随すること。組織が出す結果に対して、リーダーが及ぼす影響は2割、フォロワーが及ぼす影響は8割ともいわれます。フォロワーは、それだけ組織において有益な行動なのです。
たとえば、
「いつでもサポートするよ」
「何かあったら、できることは手伝うよ」
こうした接し方をするのです。
頼りになる先輩、いろいろと相談に乗ってくれる先輩、自分が困ったことがあったら手伝ってくれる先輩。でも、決して上から目線で先輩風を吹かせることはない。後輩に負けてたまるかという、ガチガチのライバルとして過剰に敵愾心をむき出しにするわけでもなく、かといって能力の高い後輩を取り込もうと、無闇に追従するような卑屈さも感じられない。そのようなフォロワーシップで接してくれる先輩に対して、有能な後輩は親近感を覚えるはずです。
それを積み重ねていくことで、親近感が仲間意識に変わっていくのであり、その先の、味方になってくれる可能性につながっていくことでしょう。(高城幸司)