天高く馬肥ゆる秋だが、私は絶賛ダイエット中である。
夏のはじめに暑さでやられ、2キロほど痩せたのだが、暴飲暴食ですっかりもとに戻ってしまった。これはいけないと思い、ひと駅分歩くようにしたり、外食の際はできるだけ低カロリーなものを選ぶようにしたりしているが、付き合いはなかなか断れない。代謝も落ちてくる30代。最近は、「たくさん食べる女性は魅力的」という風潮にほとほと困り果てている。
ハッキリ言わせてもらう。ふざけるな!
ここ数年、ぽっちゃり系女子の人気がいやに増している。人気アナウンサーの水卜麻美さんは、ちょっと太めの体型と美味しそうに食事を頬張る姿が大好評だ。
実際、私の周りにいる男性諸氏も、「食事を美味しそうに食べる女性は魅力的」との意見が多数派である。
「デートのときは『美味しい』と言ってたくさん食べてほしい」
「男としては、大抵の女性はダイエットなんてしなくていいと思うし、たくさん食べている姿を見るのが好き」
挙句の果てには、「北条さんも、ダイエットなんてしなくていいから沢山食べなよ」とか、「今日だけはダイエットをやめて、明日から運動すればいいだろう」と言い出す男性もいる。
その主張はよくわかるが、ハッキリ言わせてもらおう。
ふざけるな! である。
そもそも、私はアナタのためにダイエットしているわけではないし、アナタ好みの「ぽっちゃり系女子」になりたくもない。
いい加減にしてほしいのである。
「わぁ~美味しい!!」が聞きたいのか(怒)
たしかに、お付き合いの会食で「ダイエット中だから」と、ほぼすべての食事を残す女性や、ちょっと前にネットで話題になった「寿司屋でシャリだけ残す客」はヒドい。いくら炭水化物を避けているからといって、最低限のマナーは守るべきではないか。
しかし、大量の高カロリー食を腹に詰め込もうとしてくる男性も、マナー違反とはいわないが、それなりに手ごわい。
彼らは一様に、「この店のオススメは」とか、「これも美味しいから」と、大味のフレンチやらイタリアンを大量に注文する。一緒にいる女性陣が、「わぁ~美味しい!!」と平らげるのを見て、ご満悦なのだろう。
この傾向は、年配で多くの部下を従えているような男性に多い。周りにイエスマンしかいないから、「自分が提供した食事を断る女性」など、いるはずがないと思っているのだ。しかし、食べ盛りの女子高生ならまだしも、こちらは30代の立派な中年である。そんなに多くは食べられない。
それでも、「残すと失礼にあたる」と思い、無理やり胃に詰め込んだあとは地獄だ。スカートのウエストが胃をキリキリと締め付け、喉元までさっきの肉料理がせり上がってくる。メインのパスタもそろそろ出そうだ。せっかくダイエット中なのに、相手に合わせて胃袋をパンパンに膨らませてしまった後の不快感といったらない。
戦後の貧しい時代じゃあるまいし、健康のためにも暴飲暴食は避けるべきだろうに、「たくさん食べる女性は魅力的」という風潮はいったい、どこからきたのか――。
ある友人は、男性上司に誘われて行った店で、脂っこい料理を次々と注文され、たいして美味しくもないうえに食べきれないので、彼がトイレに立ったすきに全部下げてもらったそうだ。店員さんは苦笑いだったろう。
食べたくもない料理をおごられて肥えるより、自分でお金を払って、自分の好きなものを、少しだけ食べたいものである。(北条かや)