イマドキ「10年我慢しろ!」はない 若手に「権限移譲」しなさい(江上剛)

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若手からベテラン、役員も、コンパで意見交換

   さらにこんなのはどうでしょうか。

   ベトナムで働く日本企業の若手社員を見たとき、「やっぱり権限移譲が必要だな」と思いました。

   ある会社がベトナムに進出しました。その責任者は30代の若手社員です。それはそれは生き生きと働いていました。感動しましたね。本部にいちいち相談して指示を仰ぐことは不要。自分がよいと思ったことは、即実践。求められるのは、ベトナムでの成功だけ。

   日本企業は、意外と若手に権限委譲しません。雑巾がけを要求するんです。それがおもしろくなくて、若手が辞めていきます。自分の能力を高く評価しているのが、今の若者です。

   私などは新入社員の頃、「10年我慢しろ」と言われたものですが、今の若手社員にそんなことを言えば、すぐに「10年も我慢できません」と言って辞めてしまうでしょう。

   思い切って、新しいプロジェクトを若手に任せればいいんじゃないですか?

   また若手のアイデアを募り、そのアイデアの実行を、提案した若手に任せてみる。それで成功の見込みがあれば、社内ベンチャーとして資本金を援助して、独立させてあげる等々。

   いろいろ申し上げましたが、一度、若手社員と忌憚なく話し合ったらどうでしょうか。

   JALの再建物語「翼、ふたたび」(PHP文芸文庫)に描きましたが、京セラから来た稲盛和夫さんをモデルにした佐々木会長は、「コンパ」と称して若手からベテラン、そして役員たちと車座になって酒を酌み交わし、意見交換会を何度も開催したそうです。

   その中で「会社とは」「仕事とは」「自分たちとは」など、社員たちが自らの哲学を深めることで気持ちをひとつにしていきます。こんな「コンパ」も、必要ではないでしょうか。(江上剛)

江上 剛
江上 剛(えがみ・ごう)
作家。1954年兵庫県生まれ。早稲田大学卒業後、第一勧業銀行(現・みずほ銀行)入行。同行築地支店長などを務める。2002年『非情銀行』で作家としてデビュー。03年に銀行を退職。『不当買収』『企業戦士』『小説 金融庁』など経済小説を数多く発表する。ビジネス書も手がけ、近著に『会社という病』(講談社+α新書)がある。
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