将来、金利が上昇したときでも優良な中古住宅の流通を促進することを目的に、住宅金融支援機構が2017年4月から「フラット35(アシューマブルローン)」をスタートさせているのをご存じだろうか。
住宅金融支援機構の「フラット35(アシューマブルローン)」は、「債務承継型ローン」とも呼ばれる。これまでは中古物件を購入する際、買い主はその時点の金利の中からローンを選んで金融機関から借り入れ、売り主は売却代金でローン残高を返済するしかなかった。
金利上昇の可能性が高い現在にピッタリ
ところが、「長期優良住宅」の認定を受けた中古物件については、売り主が借り入れた当初のローンを買い主が「そのまま引き継ぐこと(債務継承)ができる」ようになった。
売り主が借り入れたローンの金利も期間も引き継ぐことができるので、買い主は新規でローンを組むよりも低金利で中古住宅を取得できる可能性がある。ただし、買い主はローンを引き継がない選択もできる。
長期優良住宅には、耐震性や省エネ性、劣化対策、住宅履歴情報の整備など、法律に基づいた認定条件があり、質のよい住宅の「目安」となっている。また、認定されれば当初10年間の金利が引き下げられるフラット35S(金利Aタイプ)も利用できる。
将来、金利が上昇した場合には、買い主は新規ローンよりも低金利で優良な中古住宅を取得できる。金利が上昇しなければ、買い主は引き継ぎを選択しなければいい。金利が上昇する可能性が高い現在のような状況にはマッチしている。
売り主にもメリットがある。質のよい住宅であり、金利が低いことで、アシューマブルローン付き住宅は資産価値が下がりにくい。金利年1.1%、35年返済の住宅ローンで買い、10年後に売るとき金利が2%に上がっていたとすると、買い主は金利年1.1%、25年返済のローンの物件を選ぶ可能性が高くなるからだ。
要注意! 売り主に現金が必要な場合も
なにやら、いいこと尽くめのようだが、長期優良住宅認定の物件を購入しても将来売る可能性がある人、あるいは逆に将来買う可能性がある人にとって注意しておくべきポイントがある。
物件売却価格がローン残高よりも高い場合には、買い主に自己資金が必要になることだ。現金がない場合には差額分に充てるローンが必要で、フラット35で借りるか、民間ローンの場合には第二順位の抵当権でもOKの金融機関しか使えない。
物件売却価格がローン残高よりも低い場合には、売り主に差額分の現金が必要になる。自己資金をほとんど入れずに買ってローンが多く残っているようなケースは要注意だ。
フラット35をはじめとする全期間固定金利のローンがいいと思っている人、もしかするとマイホームを将来売る可能性もあるという人には、フラット35(アシューマブルローン)は検討価値が大きい、有力な選択肢といえよう。(阿吽堂)