今年(2017年)7月、15年ぶりに海外旅行に出かけた。成田からクアランプールまで約6時間半。それは快適で気持ちがイイ。航空機内から窓の外を見ていて、ふと小刻みに揺れる翼が...... これに、ハッとした。
別に異変があったわけではない。航空機の機体の傾きや高度の調整用機器を制御する、「フライト・コントロール・アクチュエーション・システム」と呼ばれる装置を手がける、制御機器メーカーの「ナブテスコ」を思い出したのだ。
世界シェア6割の精密減速機、鉄道ブレーキも国内5割
ナブテスコは、航空機のアクチュエーターのほか、鉄道車両用機器では新幹線や在来線などのブレーキ装置で高い国内シェアをもつ。さらに、産業用ロボットの関節などに使用される精密減速機や、「NABCO」マークでおなじみの建物用自動ドアでトップクラスのブランド力を有する。
会社四季報2017年夏号によると、ナブテスコの2016年12月期(直近本決算期)の事業構成比は、精密機器が23%、輸送用機器が25%、航空・油圧機器は20%、産業用機器が32%と、ほぼ4等分とバランスがいい。
しかも、産業用ロボット向けの精密減速機で世界シェア6割を占め、鉄道車両用ブレーキは国内シェアで5割程度と「断トツ」の技術力を有する。さらに、自動ドアやプラットホームドアでも、建物用自動ドアの世界シェアで約20%、国内シェアは約50%にのぼる。鉄道などのプラットホームドアは世界シェアで約20%を誇っているという。
そんなナブテスコを航空機内で思い出したのは、2015年3月10日付の日本経済新聞の記事が頭をよぎったからだ。それによると、ナブテスコは米ボーイングの次期主力大型機「777X」向けにアクチュエーターを納入。国産ジェット旅客機「MRJ」への納入も決めており、航空機向けの売上高を2020年代前半までに倍増させるという。ボーイングの小型機「737MAX」向けの納入も決めている。
記事には、「基幹部品を生産する岐阜工場(岐阜県垂井町)では、生産能力拡大に向けた投資も検討。航空機向け事業の売上高を400億円規模に増やす」と、あった。
一方、ボーイング社のプレスリリースにある最新市場予測(2017年)では、今後20年間の新造民間航空機の需要を4万1000機超と予測。新造機の納入機数は、前年予測から3.6%増えている。同社の民間航空機部門のマーケット担当者は、「2017年に強い伸びを見せている旅客数は、今後20年にわたって毎年4.7%のペースで増加すると見込んでいます」という。
航空機を利用する旅行客が増加するにつれて、とくにLCC(ローコストキャリア)や新興国市場などで単通路機市場での需要が高まり、それらがけん引しているようだ。
ワイドボディ(双通路)市場も、約9000機の新造機需要が生じ、今後10年間の早い段階で旧式機材の代替需要の波が到来すると予測。787のような小型ワイドボディ機や、777Xのような中・大型ワイドボディ機へのシフトが進むことで、超大型機は「新造ワイドボディの貨物専用機920機の需要が生じる」と、貨物機市場が中心になると指摘している。
どうやらナブテスコにとって、航空機用の「アクチュエーター」の納入には事欠かないようなのだ。