埼玉の自宅から東京・池袋に出るとき、僕がいつも使う東武鉄道の東上線では決まって「電車内の通話禁止」の放送が流れる。
「携帯電話のお願いです。車内ではマナーモードに設定のうえ、通話はお控えください。また混雑時、優先席付近では電源をお切りください」――。車内の壁にも同様の「注意」が貼ってある。
日本の電車は息が詰まる!?
そういった案内は、東上線だけではない。池袋で乗り換える地下鉄・丸ノ内線では、そんな放送はないが、やはり車内の壁に「通話はご遠慮ください」とある。
JR山手線も放送はないが、次に止まる駅名などを表示している液晶画面に、ときどき同様の注意が現れる。新幹線では確か「座席ではマナーモードにし、通話はデッキで」と放送しているはずだ。
乗客のほうも、電話が掛かってきたら、たいていの人は「いま電車の中なので、あとで掛け直します」と言って電話を切る。僕もそうしている。そうしないで話し続ける人もたまにはいるが、そんな人には周りの「白い目」が集中する。
どうやら、(新幹線のデッキを除いて)電車内では携帯電話で通話はしない、通話するのはマナー違反だという「国民的合意」ができている感じである。
だが、どうして(とりあえず、優先席付近では別として)電車の中で通話してはいけないのだろうか。確かに、大声でしゃべられては周りが迷惑だろう。でも、巨体が疾駆するあの轟音の中で、小声で話すぐらいは許されるのではないか。
それもいけないというのなら、ふたり、あるいは数人で談笑するのも、遠慮してもらわないといけないことにならないか。
中国では、列車の中でも人々は大声で電話している。それを聞いた周りの乗客が電話の内容に割って入り、話の輪ができる。そんな場面に出くわしたこともある。中国人から「日本の電車は息が詰まる」と言われたこともあった。
どうやら私たち日本人は、電車の中に限らず、公衆の集まる場所では携帯電話で話してはならないという「固定観念」にとらわれているのではないか。