「華麗なる転身」 数学好きの父の「やるべき」ビジネス
そんな事情で、ネクタイ関連ビジネスからの商売替えを検討した父が出した結論は、なんと小・中学生を対象とした算数、数学の少人数制学習塾経営でした。
その話を聞いた母も当時高校生の私も、我が耳を疑いました。確かに私が小学生の頃、父に算数を教えてもらったことはありましたが、一介のネクタイ屋のオヤジが算数教師を商売にするとはあまりに唐突で、本当にうまくいくものなのか信じられなかったのです。
ところが、父の商売替えは驚くほどうまくいきました。はじめは、折込チラシを見て集まった生徒2~3人規模から細々スタート。徐々に生徒が増え、1年するかしないかのうちに口コミで満席状態になり、学校でも評判になるほどの「先生」になったのでした。
その当時の私は、父がうまく商売替えできた理由などまったく気にとめていなかったのですが、私自身が独立を志すに至って、その成功の理由を探りたく、あれこれ父に聞いてみたのです。
聞けば、父は元々数学者を志したこともあるほどの数学好きであり、商売替えの有無に関係なく日常的に数学の書籍や雑誌を購読していたことを知りました。すなわち、父にとって数学を教えることは、「やりたい」かつ「やれる」ビジネスであり、加えて昔から算数や数学を苦手とする子どもは多く、家庭教師よりも安価に少人数教育をするという当時まだ珍しかったビジネスモデルは、ニーズも社会的意義もある「やるべき」仕事でもあったのです。
私は父の成功例に学んで、「起業のスリーポイント」を整えて独立。親から引き継いだ資産も特段の資格もないままに、なんとか10年以上を過ごしてこられたのです。
ちなみに、スリーポイント分析は、起業だけでなく企業が新規ビジネスに乗り出す際にも同じように有効な検討材料であることは、その後に私が見てきた多くの企業でも実証済です。(大関暁夫)