「カードの機械の中におっちゃんがおったらええのに」
ただ、大阪滞在中、最後に乗ったタクシー運転手さんはちょっと違った。
私が「あのぉ......カードでお支払したいのですが」と控えめに申し出ると、運転手さんは「カード決済は2分ほどかかってしまうんやけど」という。
「構いません。むしろお手数をおかけしてごめんなさい」と私。すると運転手さんは、自分が務めるタクシー会社の不満をとうとうと述べはじめた。
「うちの会社も、2020年までに最新のカード機械を全車導入するゆうてるんですけどね、こんな古い機械やとどうにもなりませんねや。カード通しても一発では認識されへんから、紙を1枚重ねて通すこともあってね」
「しかも偽物のカードや~ゆう疑いが出たら、本社に電話で確認せなあかんのですわ。これがまた手間でしてねぇ」
そうですか。それは大変ですねぇと聞いていると、
「それで、お客さんは『急いでんのに』って怒らはるでしょう。ほんまにね、このカードの機械の中におっさんでもおって、上手いこと処理してくれたらええのに思いますわ(笑)」
お、面白い......!この運転手さん、めっちゃおもろいやん!
興奮した私は思わず、「そうですねぇ。カードを読み取るおっさんがおって、仕事してくれたらいいですねぇ」とノッてしまった。
東京で、こんなギャグを言って笑わせてくれる運転手さんはまれだ。関西のタクシーは基本的に「ちょっと怖い」と思っていたが、現金払いならニコニコ受け付けてくれるし、たまにこうしてひと笑くれるから、結構好きかもしれない。(北条かや)