社長こそ、「働き方改革」が必要です
そう言ってF社長が指摘したのは、「実力のある経営者や、あるいは自分の実力を過信している経営者は、自分でやった方がうまくいくだろうと考え、とても心配で人任せにできないのではないか」ということ。
一方のF社長は、「自分の実力に自信がないから、社員に営業を任せた方が稼げるんじゃないかと思うし、皆の意見を聞いたほうが自分に思いつかないいい意見が出るんじゃないか、と思う」のだと言うのです。
多くのオーナー経営者は、「自分が社内で何事も一番できるから、トップに座っているのだ」という思い込みや、「周囲から意見を出されて自分の威厳を傷つけたくないから、意見を求めずに一方的に上から目線で話をする」というトップのプライド的な考えを、心のどこかに秘めているのかもしれません。
F社長の話を聞いて、多くの企業ではオーナー経営者の心配症やプライドの裏返しが、社長経営の独禁法違反をつくり出しているように思えました。
F社長はさらに興味深いひと言で、私の質問への回答を締めくくってくれました。
「社員の皆ががんばってくれるから、私は定時に帰ることも多く休暇もたくさん取りますし休日出勤もまずありません。私の考えでは、今の時代働き詰めや休日返上の社長はカッコ悪い。社長が率先して自身の働き方改革をすることが、業績が伸び社員が育つ近道かもしれません。働き方改革をすれば、社長独占経営ではとても回らなくなりますからね」
「社長独占経営」から「社長の働き方改革」へ。この考え方こそが、最終的には多くのオーナー企業が悩む「人を育てる」カギを握っているのかもしれません(大関暁夫)。