興行収入が累計240億円を突破した「君の名は。」や「聲の形」などの多くのアニメ映画が大ヒットした2016年のアニメ業界にあって、アニメ制作企業の1社当たりの収益力が低下していることが、帝国データバンクの調べでわかった。2017年8月22日に発表した。
2016年のアニメ制作企業全体の収入高は1813億4700万円。過去10年間で最高だった一方で、1社当たりの平均収入高は7億9900万円と10年間で約4割の減収となっていた。
2000年以降に137社が起業、アニメーター不足深刻
アニメ制作企業の厳しい収益実態が浮き彫りになった。帝国データバンクによると、アニメ制作企業(対象230社)のうち、2016年に「増益」だった企業の割合は全体の44.2%で、一方の「減益」企業は46.5%だった。
減益企業は2012年に36.3%を占めていたが、それ以降も増加傾向で推移しており、15年には過去5年間で最高となる60.4%に達した。前年に比べて減ったものの、減益企業はなお増益企業を上回っている。
アニメ制作企業の収益が低下している理由について、帝国データバンクはJ‐CASTニュースの8月23日の取材に、「新しいアニメ製作会社が増えて1社当たりの分配が減っていることと、アニメーターの人手不足が原因」と話した。
アニメ制作企業は230にのぼっている(2017年8月時点)。1990年代までは93社だったのが、2000年代以降に新たに137社が起業した。アニメ市場の規模が拡大する以上に制作企業が増加。競争が激化しているうえ、アニメーターなどのスタッフを確保しようと人件費が増加したことも、減益につながっている。「社内の人手不足から、外注しようにも費用がかさむことも減益要因になる」ともいう。
また、「サムライチャンプルー」(2004年放送、フジテレビ系)などを制作していたマングローブや「ストラトス・フォー」などのスタジオ・ファンタジアなど、業況の低迷による収益減を理由に破産したケースも少なくない。