遅ればせながらではあるのですが、ブルーレイレコーダーと言うものを購入しました。地上波デジタル放送になった折に、番組録画はテレビ付属のハードディスク対応にしたので当面ブルーレイレコーダーは不要と考え、必要になったら買おうとの判断でした。
ところが、最近ハードの調子が悪く(使い込んでいけばパソコンと同様、ハードが老朽化するのは当然)、録画ができていないことも多くいよいよ決断の時を迎えたのでした。
最新のブルーレイレコーダーにとまどい
地上波デジタルテレビ放送、いわゆる地デジへの移行が2011年ですから、今から6年前。当時私は51歳でした。「テレビをデッキに繋ぐだけのこと。そのぐらいのことは自分の経験から簡単にできるから問題ない」というのが、その時の私の感覚でした。
ところが今回ブルーレイレコーダーを購入するにあたり、家電量販店で各電機メーカーのパンフレットを収集して愕然としました。別の部屋でのビデオ再生にスマホでの持ち出し再生...... 「6年でこんなにも技術は進んだのか」と。
若い人から見ればごくごく当たり前の現実であり、「何を時代遅れなことを言っているんだ、このオヤジ」とドヤされてしまいそうですが、われわれ世代にとっては驚きの進歩です。そこそこのITリテラシーを維持してきたという自負があった私ですが、やや自信喪失ぎみになりつつも最新のブルーレイレコーダーを購入した、そんな出来事でした。
図らずも知らず知らずのうちに進んでいた世の中の技術の進歩や、それに対する自分の遅れを悟るに至ったわけですが、その流れでふとこんな話を思い出しました。
去る元米国通商部上層部の人物が、近年のアメリカの組織における人材の評価について雑誌のインタビューに答えた話です。
「過去における次期リーダー登用基準は、どちらかというと行動力と経験重視であった。しかしながら、今のような変化の激しい時代においては、行動力はもちろんだが経験よりはむしろ、新しいことを学ぶ力、吸収する力を重要視するようになってきている」
結果として、40代の人が優先してリーダーの座につくようになり、60代であるこの方も引退を余儀なくされたのだと言います。もちろん年齢だけで判断するわけではなく、あくまで学習能力重視ですから、たとえ60代であっても学習能力があればリーダー足り得るわけですが、「若い人と伍していくのは、それ相当の努力を要する」ということであるのは間違いないようです。
役員への「期待」でわかる企業の成長力
こんなことから、先週訪問した2社の経営者に同じ質問をぶつけてみることにしました。2社は歴史ある東証1部上場企業A社と新興市場上場のベンチャー企業B社です。私の質問は、「御社で社長の右腕たる役員の方々には、何を求めていますか」というものです。
一部上場A社の社長は少し悩んで、言葉を選ぶようにこう言いました。
「ありきたりの言い方にはなりますが、うちで役員になっている彼らはすでに能力があってその地位にいるわけですから、その能力と豊富な経験に裏打ちされた知見を活かして経営を支えて欲しい、そんなところでしょう」
これに対してベンチャー企業B社社長は、
「うちで役員に抜擢した人たちは、皆それなりに能力が高いと思っています。ただ問題は、それはあくまでそのポジションを獲得するための能力に過ぎないのだということ。私は、そのことを彼らに直接話しています。そして役員に求めることとして、外部へのネットワークを広げて外で学び、それを会社の発展に活かしてほしいと伝えています。今の時代、企業サバイバルのポイントは、そういうところにこそあるのだと思うからです」
必ずしもこの考え方の違いだけが理由ではないでしょうが、A社は歴史ある優良企業ではありますが、近年のパラダイムシフトの局面でやや苦戦を強いられています。一方、B社はベンチャーの身軽さも手伝い時代の波に乗って破竹の快進撃を展開しています。積極的に新たなことを学ぶ姿勢の重要性を、感じさせられる事実ではあります。
年齢を重ねるにつれ、新しいことを吸収する力が衰えていくのはやむを得ないことかもしれません。しかも、技術の進歩やそれに伴うサービスの高度化など時代の流れはより一層早くなっていくわけであり、われわれ1950年代生まれ以前のビジネスマンにとっては、より一層の努力が強いられる時代であるとも言えるでしょう。
経営者が少しでも自身の時代への遅れを感じた時が、引退の潮時なのかもしれません。その意味では、経営者の次世代へのバトンタッチは従来以上のスピード感が求められるようにも思います。
とりあえず私は、最新ブルーレイレコーダーの活用をマスターすべく奮闘中です。(大関暁夫)