ケチな会社は見捨てるにかぎる 「幸運の女神には前髪しかない」(江上剛)

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   近く、いま勤めている会社を退職します。転職後の情報漏えい防止のため、会社と守秘義務契約を結ぶことはありますが、ちょっとカチンときたことがあります。スマホやパソコンに入っている取引先のデータを消すことは承知しているのですが、それを確認するためにスマホを見せろというのです。そもそも個人のスマホを会社の業務に使わせておいて、個人のデータが入っているスマホを見せろというのは、どうなのでしょう。ちなみに、わたしは以前からスマホを仕事で使うのだから支給してほしいと会社に訴えてきました。スマホの使用料も個人負担です。見せたくないのですが問題はありませんか。

   会社でスマホを支給しないなんてケチな会社ですね。

  • ケチだな~
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会社は情報漏えいにナーバスなもの

   そうはいうものの、私も銀行を辞めるとき、守秘義務を課せられたり、同業他社への転職は禁じられたりしました。

   もし秘密を持ったまま転職し、そこがライバル企業だったら大問題になります。ことによれば損害賠償請求されることにもなりますから、要注意です。

   あなたが技術系の仕事をされていればなおさらです。会社は情報漏れには最大限の注意を払っていますからね。

   あなたがライバル会社に転職した場合のことを考えてみましょう。

   ライバル会社に転職することを完全に制限することは、憲法で保障されている職業選択の自由を制限することですから、公序良俗に反するということで無効になることもあります。ですから、あなたは次の、その会社に無事に入社できるでしょう。

   ただ、これでひと安心と思ったら間違いです。あなたが前の会社と同じ製品をつくれば、訴えられることは間違いありません。

   情報を持ち出してはいないと主張しても、前の会社は「あなたの頭の中にある情報を不当に使用して同じ製品をつくった」と主張するでしょう。それくらい情報漏えいにはナーバスなのです。

   私は法律家ではないので個人のスマホを見せないことが、何らかの懲戒理由に該当するかどうかは明確にはわかりません。

   あなたのスマホに入っている情報が、個人情報の保護や信書の秘密などに該当するのかは、ちゃんと法律家の見解を得るのがいいでしょう。

   しかし、あなたが円満に退社したいと考え、とくにライバル会社に転職するのではなく、また絶対に会社の情報を持ち出していないとすれば、あなたのスマホを見せるほうがいいのではないでしょうか。

   私ならそうすると思います。腹が立ちますが、さっさとそんなケチな会社を去りたいからです。

   最後っ屁で「会社でスマホを支給されれば、こんな嫌な思いはしなくていいんですがね」と嫌みのひと言も言い残しますけどね。

江上 剛
江上 剛(えがみ・ごう)
作家。1954年兵庫県生まれ。早稲田大学卒業後、第一勧業銀行(現・みずほ銀行)入行。同行築地支店長などを務める。2002年『非情銀行』で作家としてデビュー。03年に銀行を退職。『不当買収』『企業戦士』『小説 金融庁』など経済小説を数多く発表する。ビジネス書も手がけ、近著に『会社という病』(講談社+α新書)がある。
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