朝日新聞の1ページ全面を使って、最近人気の「酵素サプリ」なるものの広告が載っていた。
これを飲めば、「毎朝自然にスルスル~!!」とのことだ。腹部に両手を当ててほほ笑む女性の全身写真が添えられている。彼女は52歳で、「ポッコリがスッキリ!」との吹き出しがついている。
なんか、ズルくない?
「ご愛用者さまの声」のところにも彼女は顔写真付きで登場していて「悩んでいる方はだまされたと思って一度ためしてみて欲しいですね」と言っている。
「便秘」という言葉は一度も出てこないが、この酵素・酵母とやらは、いわゆる便秘をすっきりと解消してくれるのだろう。知人に教えてあげようかなと思いながら、さらに読み進むと、とりわけ小さな字で記した文が目に入った。
彼女の言葉の下に「個人の感想であり、効能、効果を謳ったものではありません」とあるのだ。えっ、じゃあ、これだけ宣伝しているのに、もし効かなくても、仕方がないって言うの? それって、少しズルくないだろうか。
やはり朝日新聞の一面全部を使った、ある薬用育毛剤の広告は「1ヵ月使ってみてのお支払い! ご満足できなければ代金不要の育毛剤!!」と、効き目には自信たっぷりのようだ。
「うれしい笑顔が全国から」と称して、徳島県在住の女性ら7人の姓名と笑顔の写真が載っている。「まさか・・・ 結局親子3人で使うようになりました。東京都(男性)」などという言葉もある。
しかし、これにも「個人の感想であり、効能効果を保証するものではありません」との一文がついている。「満足できなければ代金不要」とまで言っておきながら、これはまたなんと自信のないことだろうか。
大手メーカーまでも「言い訳」
でも、以上の二つはそれほど大きくはない会社の商品である。効かなかった場合に責任を追及されたくないという気持ちも分からないではない。
だが、味の素株式会社という大企業も同じことをやっている。「睡眠のためのサプリメントで 日本初 機能性表示食品」なる触れ込みの「休息サプリ」である。
やはり朝日新聞の全面広告で、「『休息サプリ』を飲んでからはぐっすりと眠れて、朝からすっと気分よく始められます。おかげで、色々なことに前向きにチャレンジできています。男性/59歳」といった3人の「喜びの声」が載っている。
そのすぐ下には、これもまた見逃してしまいそうな小さな字で、「お客様個人の感想です。実感には個人差があります」と続く。
この種のものは新聞の広告だけに登場するのではない。テレビでも同じである。そして、テレビの場合はあっという間に字が消えてしまうから、新聞広告よりズルいと言えるかもしれない。
こうした「言い訳」「責任逃れ」は、サッカーで言えば「イエローカード」であろう。消費者がこれらに立ち向かうにはどうすればいいのか。それは案外に簡単で、「個人の感想」なぞと書く商品は買わないようにすること―― 。それに尽きるのではないか。(岩城元)