マイホームの値段に頭がクラクラ 同窓会で感じた「独身の特権」

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「ヒモさんとは、最近どうなの?」

   まぶしい目で見つめる私に、話題が回ってきた。「ヒモさんとは、最近どうなの?」そうだ、彼のことを話さなければ。私は渾身のネタを披露した。

「仲はいいよ。この前なんて、彼が私の『すね毛』を写真に撮って、『ムダ毛生えてるぞ』ってからかってきたんだよね。ムカつくわ~!」

   一同、爆笑。この「すね毛撮影事件」、女子相手には鉄板のネタなのである(男子に言っても「は?」という顔をされて終わるだけなので注意している)。

   ついでに私は、「あまりにイラっときたから、いきおいで全身脱毛を申し込んできたんだよね」と言った。その瞬間、「え、それって何十万もするんでしょ?」と、同級生たち。

「いいなぁ、かやは。お金をぜ~んぶ、自分のために使えるんだもんなぁ~」

   へ? と拍子抜けした。そんなの当たり前じゃないの? 自分のお金の使いみちを自分で決めるのは、私にとって自明の理だ。そんなことが羨ましがられるとは、思ってもみなかった。というより、夢のマイホームを建てるのだって「自分のため」じゃないのか......?

   違うのだ。友人たちは、パートで稼いだお金を、自分のためではなく「家族のため」に使っているという認識なのだ。美容や趣味など、自分を直接的に向上させるためのお金でないものは、一切「自分のため」と感じないのだという。

   独身の私に向けられたのは、自分のため「だけ」にお金を使い、自分のため「だけ」に生きる人生への羨望だった。当たり前だと思っていたが、独身生活って、そんなに羨ましいものなのか。生活の不安定さに閉口することも多いけれど、今、私が味わっている自由は、何者にも代えがたい幸せなのかもしれない。

   私たちは非常に仲がいいので、昨今流行りの「マウンティング」とやらをしたわけではない。それぞれが違う世界を見て、自分が手に入れられなかった夢を羨望しあっているだけである。ないものねだりといえばそれまでだろうか。

   お盆休みが終わり、私はまた、仕事の合間に全身脱毛へ通い、誰のためでもなく「自分のため」にお金を使う生活に戻る。ある種の「自由」を諦めた友人たちの分まで、楽しまなくては損じゃないか。独身の特権っていうのも、案外捨てたもんではない。(北条かや)

北条かや
北条かや(ほうじょう・かや)
1986年、金沢生まれ。京都大学大学院文学研究科修了。近著『インターネットで死ぬということ』ほか、『本当は結婚したくないのだ症候群』『整形した女は幸せになっているのか』『キャバ嬢の社会学』などがある。
【Twitter】@kaya_hojo
【ブログ】コスプレで女やってますけど
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