どんな企業でもいつ何時、不祥事に見舞われるかもしれないリスクを抱えている。東芝やタカタ、オリンパスに、古くはカネボウといった誰でも知っている企業も「悪いこと」と知りながら粉飾に手を染めた。
そこまでではなくても、日本マクドナルド・ホールディングスのように、商品への異物混入などで客足が途絶えて赤字に転落したことは記憶に新しいところ。それこそ、生死をさまよいかねない事態に陥るのだ。食品大手のキユーピーにも、ヒヤリとさせる場面があった。
株価急落、異物混入乗り切ったのになぜ?
2017年2月、キユーピーが販売する「深煎りごまドレッシング」に異物(金属繊維)混入問題が発生。同社はすぐに商品回収のお詫びとお知らせを、翌2月8日付の日本経済新聞などに掲載していた。
問題が発生したことはさておき、感銘を受けたのは問題発生から告知、回収に至る対応の早さだった。食品の場合、起きた問題への対応の良し悪しが、その後の企業イメージにとりわけ重要性な役割を果たすと考えられる。
今回の「深煎りごまドレッシング」への対応をみると、これまでのこうした問題への対応の積み重ねが、キユーピーの今日のブランド力となっているようにみえた。雪印(現・雪印メグミルク)や日本ハムなど、2000年代初めに相次いだ食品事件を契機に、食品大手がこぞって危機管理体制を整備してきた結果なのかもしれない。
こうした問題は、株価にも如実に反応する。2017年2月7日のキユーピー株は2856円。前日比14円安と下げた株価は、翌8日には16円高の2872円と戻していることからもわかる。10日の終値も、2894円だった。その後の株価推移をみると、このドレッシング問題は急速に収束に向かったようだ。
キユーピー株は17年1月下旬から業績の拡大期待で買われ、3月30日には年初来高値の3290円をつけていた。
ところが、そんなキユーピー株が4月4日に年初来安値の2908円と急落した。およそ1か月半ぶりの安値で、終値は前日比318円安の2958円だった。4日に発表した2016年12月~17年2月期連結決算で、営業利益は前年同期比28%増の55億円だったものの、前年同期に会計処理の変更で計上した一時費用28億円がなくなったことに伴う利益の押し上げ効果が大きく、これを除くと36%減益だった。実質的に営業減益になったことで投資家から嫌気され、売りが膨らんだわけだ。
4月5日付の日本経済新聞は「銘柄診断」にキユーピーを掲載。アナリストは、「商品の集約などの構造改革が販売に負の影響を与えている可能性があり、注視したい」と指摘。「1月下旬から業績拡大が期待され買われてきただけに、株価の戻りには時間がかかるとの見方もある」とコメントしていた。