あのソニーも陥った
本書ではサイロ効果のわかりやすい具体例として、ソニーのウォークマン事業の失敗例をあげています。事業部制を敷いていたソニーは、ウォークマンで大成功した事業部が自部門の方針と実力を過信して、他の事業部や経営者の意見をも軽視して暴走。結果として、その後の事業展開にことごとく失敗し、世界のデジタル音楽市場では後発のアップル社に大きく水を開けられることになってしまったというのです。
サイロ効果は技術者の世界では特にありがちなことで、この言葉自体は新しいものの、何十年も前から研究の「タコツボ化」として指摘されてきたことでもあります。
技術の世界は、研究が進めば進むほど専門分野以外に興味を持たず、その研究者や開発者はタコツボの中に閉じこもった状態になりがちなのです。そのため技術系企業では、その間を繋ぐ役割の人材を置いて各部門に常に外部環境との接点を持たせ、行き過ぎたタコツボ化、すなわちサイロ効果を回避する工夫もしなくてはいけないのです。
S社長の前回の失敗要因は、まさにこのサイロ効果にありました。事業拡大に伴う組織の細分化により、主要な開発事業部は自己の世界に閉じこもるようになり、世界の最先端を行く大口クライアントが、消費者を見据えて日々刻々変化をさせていった微妙なニーズの変動に追いつけなくなっていったわけです。