「せまい日本 そんな急いでどこへ行く」
エスカレーターというものはそもそも、走るのはもちろん、歩くようにも設計されていないそうだ。段差は階段よりも大きいので、つまずきやすい。走ったり歩いたりは危険だし、故障の原因にもなる。
駅や百貨店などでは「エスカレーターでは歩かないでください」といった放送を耳にするし、ポスターも貼ってある。
だが、守られる気配はいっこうにない。
その「元凶」が片側空けである。空けておかないと、走ったり歩いたりの人から文句を言われかねない。もめるのはイヤだから、つい空けてしまう。空けると、エスカレーターを駆ける人たちの「天下」になってしまう。
では、それをやめさせるにはどうするか。仮に「歩行禁止」にしても、どれだけ守られるだろうか。結局は、エスカレーターに乗る人たちの自主性に任せるほかはないのだが、北京の地下鉄でのように、注意してけんかになりそうなのも困る。
そこで、たとえば片側空けに反対する人たちが「有志連合」を組む。そして、エスカレーターに乗るときには、二人ずつ並んで立ってみる。その人数が多いほど因縁もつけられにくい。そうやって、無言の圧力で少しずつ片側空けをなくしていく。名案とは言えないけれど、どんなものだろうか。
かつての交通安全のスローガンに「せまい日本 そんな急いでどこへ行く」というのがあった。エスカレーターも同じである。エスカレーターで急いでいる人たちを笑ってあげようではないか。(岩城元)
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