右肩上がりで給料が上がっていった昭和の高度成長期は遠くなり、いまや思うように昇給は望めない。それなら、いっそ副業でも......という考えが頭をかすめる人は多いのではないだろうか。
最近は国が「働き方改革」を進めるなか、大手企業も副業を容認しはじめた。「副業禁止」が当たり前だった、これまでの風潮は大きく変わりはじめている。
83%が「収入を得るため」に副業
会社の信用力やイメージの低下、外部への情報漏えいの防止、過労による本業への悪影響などの理由から、就業規則などで副業を禁止している会社は少なくない。会社への強い帰属意識を求める、昭和時代から続く日本の企業文化も背景にあるかもしれない。
しかし、そんな日本人の「働き方」が少しずつ変わってきている。
人材採用や入社後活躍をサポートするエン・ジャパンが、転職サイトの「エン転職」の利用者で20~40代の正社員に、「副業に興味はありますか?」と聞いたところ、「興味がある」と答えた人は88%と、じつに9割近くにのぼった(有効回答数は5584人、2017年4月3日~4月30日に実施)。
その理由については、「収入を得るため」が断トツのトップで83%。次いで「自分のスキルアップのため」が23%、「自分のキャリアを広げるため」17%、「人脈をつくるため」15%、「その他」1%となった。金脈や人脈ともに増やしたいというのが、動機のようだ。
「副業の経験はありますか」との問いには、67%が「ない」と回答。また、副業の経験がある人に「週に何時間ぐらい働いていたか」を聞くと、「1?3時間未満」と「5?10時間未満」が23%ずつと最多。「副業で得た収入」は、「1?3万円未満」と「3?5万円未満」がともに24%と最も多かった。
一般に、正社員がいざ副業をはじめようとして、ぶつかる「壁」が、会社が就業規則などで副業を禁止しているかどうか、だ。
この調査でも、「現在勤めている会社で副業は解禁されていますか」との問いに、「解禁されている」と答えた人は19%しかいなかった。
副業は「彼女がいるのに別の女性と付き合うのと同じ」
ところが、最近は少しずつだが、副業を認める会社も出てきている。社員の知見を広める目的で、リクルートやサイボウズ、ロート製薬などは、以前から副業を認めていることで知られる。最近では、この7月からグロービス経営大学院などを運営する「グロービス」でも、副業制度をスタートさせた。
グロービスでは、副業することを事前に申請。「本業に支障をきたさないこと」や「労働時間は本業と副業を通算して法定労働時間内に収めること」といった諸条件を満たせば、副業を認める。
これまでに「声楽家としてオペラ公演に出演」した人や「地域観光協会の活性化企画をウェブで支援」した人のケース、「動物関連団体を支援する公益社団法人に理事として参画」した人など、副業の事例があるという。
ツイッターをみても、
「副業にはよいことが沢山ある。収入が増えてやりたいことができるだけでなく、個人の稼ぐ能力が上がる。自立して稼ぐ力は一生の財産」
「副業を禁じている会社が多いのですが、社員の給料が増えないなか、苦しい生活を強いられている社員も多いのではないでしょうか」
「原則、副業を認め、他の収入を得るようにしましょう。退職後も、役立つと思います」
「社員に副業を認めつつある状況だけれども、これは加速していってほしい」
「副業で個人が儲けるもよし、別の業種、別の技術を培うもよしだと。応用の効く人間が登場しやすくなると思う」
と、「副業解禁」を望む声が多く見られた。
ただ、やはりその一方で、
「副業のせいで疲れてしまい、本業に支障が出てしまうってケースなんかは論外だと思うけど」
「僕が社長でも社員が副業をやっていたら、うれしくは思いませんからね。彼女がいるのに別の女性と付き合うのと同じです」
といった、厳しい声もあった。