顧客ニーズ高い毎月分配型「ほしいものを売らないわけにいかない」
たとえば、顧客と金融機関との訴訟に発展するケースが多く、金融庁が問題視する商品の一つとして、2016年9月の「金融レポート」に取り上げた「毎月分配型の投資信託」がある。手数料が高いことに加え、税制面で非効率であるうえに運用に無理がある、と指摘している。
なにしろ、「毎月分配」を行うために、運用が低調で分配金が稼げなかった場合には、元本を取り崩して分配を行うからだ。
販売する金融機関から説明を受けたとしても、高齢者は理解しないまま購入してしまうケースも多く、いざ元本が減少していると販売金融機関とのトラブルに発展するケースが少なくない。
ある信託銀行の幹部は、「年金の支払いが2か月に1回なので、毎月現金を受け取れる毎月分配型の投資信託に対するニーズは根強いものがある」と指摘する。
いくら、フィデューシャリー・デューティーを宣言していても、顧客が購入したいと言えば、販売しないわけにないかない。投信を販売する金融機関にとっても、頭の痛いところだ。
加えて、販売する金融機関側では、投資信託の手数料開示が進み、これまでのように手数料収入を当てにできなくなってきている。
日銀のマイナス金利政策の影響で、収益力が弱っている金融機関にとって、投資信託販売の手数料収入は収益源の一つでもあったわけだが、投信に対する信頼性の向上のためのフィデューシャリー・デューティー宣言は、金融機関にとっては「痛しかゆし」だったのかもしれない。(鷲尾香一)