皆がバラバラ、好き勝手 そんな時にリーダーがやるべきこと?(江上剛)

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あるプロジェクトのリーダーを任されました。ところが、メンバーは兼務、兼務で仕事のペースがまちまち。打ち合わせするにも苦労しています(わたし自身も兼務ではあるのですが...)。プロジェクトでの役割は各自に振ったのですが、みんなが好き勝手に動き、進捗状況もわからないような有様です。わたしの力不足であることはわかっています。どうすれば、みんなが同じベクトルに向かっていけるのでしょうか? なんとか、現状を打開したいです。

   おかしいですね。そのプロジェクトにはお客もいて、期限もあるんでしょう? それなのに進捗状況も管理できないなんてことがあるんですね。

  • リーダーがみんなを引っ張る!
    リーダーがみんなを引っ張る!
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とにかく、徹底的に話し合え!

   とにかく、プロジェクトメンバーと徹底的に話し合うことです。あなた自身の本音をさらけ出すことです。

   私事で恐縮ですが、第一勧銀総会屋事件の後始末で10人の部下と共にヤクザや総会屋から大変な金額の不良債権を回収したり、不正な商取引を解消したりすることになりました。私は、その10人の部下を率いるリーダーでした。

   このプロジェクトは相手から危害を加えられる可能性がありました。最悪は命さえも奪われるかもしれない。恐怖がメンバーを支配しました。

   しかし、恐れてばかりいられません。私は10人の部下の人たちと、どうしてこれをやる必要性があるのか、危害を加えられないために、これだけの防衛措置を採用する、もし一人でも危害が加えられることがあれば、私は責任を取って銀行を辞めると宣言しました。

   メンバーは、私の本気度を信じてくれたのでしょう。「私たちは死んだっていいです。いい銀行にしましょう」と、メンバーの一人が言ってくれました。私は感激しました。その声に励まされて、メンバー全員が力を合わせ、知恵を出し合い、ヤクザや総会屋と毅然として正面から対峙し、不良債権の回収や不正取引の解消に突き進みました。

   全員が同じベクトルを向いたので相手は恐れ戦き、返済や取引解消に応じてくれました。全員が一つになれば、できないことなどないのです。

   まずは、話し合うことです。もう一度言いますが、その時はあなたが格好つけたり、上司面したりしてはダメですよ。

稲森氏がJAL再建で言ったこと

   仕事を上手に動かすためには、「Plan Do See(プラン・ドゥ・シー)」というサイクルがあります。

   プロジェクトのメンバーを集めて、プランを立て、それを進め、進捗状況を管理する。これを進めていけばいいでしょう。

   とにかく、みんなが同じベクトルを向くというのが大事です。

   私は「翼、ふたたび」(PHP出版刊)という小説で日本航空(JAL)の再建を描きましたが、そこに京セラを創業した稲盛和夫氏をモデルにした人物を登場させています。稲盛氏はJALの再建を請け負った人物です。

   彼は繰り返し、社員たちに「同じベクトルに向かおう」と言ったのです。時には叱り、時にはコンパと称する車座の飲み会で、この言葉を繰り返しました。

   じつは、会社再建のためにやるべきことは多くありません。ただ一つ、お客様に役立つ会社であるのかということだけです。お客様の役に立つ会社なら、お客様がついて来てくださり、再建ができるのです。

   そのために、どうしたら同じベクトルに向かうことができるのか、皆で考えねばならないのです。ベクトルの向かう先にはお客様の笑顔があり、その先には再建の喜びがあるのです。こうしてJALは再建できました。

   あなたもメンバーと真剣に、からだを張って、同じベクトルに向かおうと話し合うべきです。プロジェクトの必要性を、皆で認識して共有できたら、後はプラン・ドゥ・シーを、あなたが動かせばいいだけです。(江上剛)

江上 剛
江上 剛(えがみ・ごう)
作家。1954年兵庫県生まれ。早稲田大学卒業後、第一勧業銀行(現・みずほ銀行)入行。同行築地支店長などを務める。2002年『非情銀行』で作家としてデビュー。03年に銀行を退職。『不当買収』『企業戦士』『小説 金融庁』など経済小説を数多く発表する。ビジネス書も手がけ、近著に『会社という病』(講談社+α新書)がある。
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