最近、図書館に行って気が付いたことがある。この時期になると、図書館には必ずホームレスと思しき人が、開館とほぼ同時に涼みにやってくるのだ。冬場も同様に、暖を取りに来ていた。
ところが、おそらくはこの10年ぐらいだろう、こうした人たちは減り、現在ではほとんど見かけなくなった。いったい、ホームレスはどこに行ったのだろうか?
青森、秋田、山形、奈良、島根はホームレス「ゼロ」
厚生労働省が2017年5月23日に発表した「ホームレスの実態に関する全国調査」からも、ホームレスの減少は明らかだ。
ホームレスとは、「都市公園、河川、道路、駅舎、その他の施設を故なく起居の場所とし、日常生活を営んでいる者」と定義されているが、2013年調査では全国で8265人のホームレスがいた。
しかし、2017年調査では5534人(男性5168人、女性196人、不明170人)と、13年と比べて2731人(33%)も減少している。
ホームレスは、青森県、秋田県、山形県、奈良県、島根県では確認されておらず、それ以外の42都道府県にいる。2016年の6235人(男性5821人、女性210人、不明204人)と比べると、男性が653人、女性が14人、不明が34人の合計で701人減少しているが、このうちの43.9%にあたる308人が大阪府で減少。次いで、東京都の76人減、神奈川県の56人減と続いている。
この結果、2017年の調査時に1000人以上のホームレスが確認されているのは、東京都が1397人、大阪府が1303人、神奈川県は1061人の合計3761人で、全体の68%がこの3都府県にいることになる。
もっとも、東京都の場合は23区内に1397人中1246人が、大阪府は大阪市に1303人中1208人が、神奈川県では1061人のうち横浜市に531人、川崎市に341人がいる。大都市へ集中していることは明らかだ。
さらに、2017年調査では公園に1273人(23.0%)、河川に1720人(31.1%)、その他施設に1315人(23.8%)が起居する。この比率は、2013年調査から時系列にみると、公園では減少傾向にあるが、河川では同じ水準で推移し、その他施設では増加傾向にある。
ある区の福祉担当者は、「特に公園は、近隣住民からホームレスを立ち退かせてほしいとの要望が多い。一方で、近年では空き家などにホームレスが住み着くケースも増えており、これが公園でホームレスが減少し、その他施設で増加している要因かもしれない」とみている。
2020年「その時」ホームレスはどこへ行くのか
それぞれの地方自治体でホームレスの自立支援に取り組んでいることが、ホームレスの減少につながっているという指摘もあるが、一方では「ホームレスの自立は簡単ではない」(区の福祉担当者)という声も多く聞かれる。担当者は、「公園などから立ち退かせる際に、支援施設への入居などをきちんと手当しないと、どこかへ消えてしまい、追跡調査するのが難しい」という。
また、若者層などでは「脱法ハウス」や「ネットカフェ」、24時間営業のファストフード店を転々とする、ホームレスかどうか定かでないような人も少なくない。
つまり、本当のところは支援施設などに入居しない以上、ホームレスがどこへ行ったのかは、正確には把握できていないというのが実情なのだ。
その一方で、東京都は2024年度までにすべてのホームレスが地域生活へ移行できるようにすることを目標に掲げている。2020年には東京五輪・パラリンピックがあるから、それに向けてホームレスの「排除」は一層進むことになるだろう。
世界的にみても、過去のオリンピックや大規模なスポーツイベントの開催では、開催地からホームレスが追い出されたり、すまいを強制的に移されたりしたことがなかったわけではない。
東京で暮らすホームレスがその時、支援施設に入居するなどにより自立が進めばよいが、半面、行方知れずの状況になる可能性も高い。(鷲尾香一)