Windows は20年連れ添った「糟糠の妻」
というわけで、まずは美しいMacBook Airに、使い慣れたWindows10をインストールしてやった。「新しい恋人に、元妻の味噌汁をつくらせて、昔の快適さを味わおう」という魂胆である。
ところが、OSをWindowsに変えても、いちばん大事なキーボードが変わらないので、使い心地は悪いままだった。
「私は元妻の味噌汁が飲みたいんだよ! どうしてうまくつくれないのか!」と、イライラしてしまうのである。なんとも情けないし、Macのほうでも、無理やり元妻のレシピを押し付けられて、嫌気が差していただろう。「知らないわよ、あんたが勝手に、長年連れ添った奥さんを捨てて私のところへ来たたんでしょ」という感じである。
そこで今度は、若くてキレイな恋人、Macに、外付けでWindowsのキーボードをつなげてやった。ディスプレイも見やすい別の物を買ってきて繋いだ。
きらびやかなMacは完全に観賞用となり、私はすべてをWindowsで済ませる生活に戻ったのだ。やはり元妻、ビル・ゲイツより素晴らしいパートナーはいなかった。最初から浮気などせずに、ビル・ゲイツの元へとどまるべきだったのだ。ジョブズの美しさもいいが、ゲイツを失ってから、その空気のような快適さに気がついた次第である。
Macユーザーからすれば「こんなに美しいMacが使いこなせないなんて......」と思われるだろうが、私にとってこの体験は、恋愛よろしく感覚的なものだったから、仕方ない。ああ、今日も手に馴染むWindowsで、私は糟糠の妻との穏やかな日常を噛み締めている。(北条かや)