役員の業務遂行に起因する損害賠償請求によって被る損害を補償する、会社役員賠償責任保険(Directors and officers、D&O保険)の補償額が平均5億円にとどまっている。東京海上日動保険が2017年7月18日、J‐CASTニュースの取材に答えた。
D&O保険の補償額は、米国など海外では100億円を超えるのが一般的とされ、海外とは比べものにならないほど、少ないことがわかった。
保険料、企業の41%が「全額負担」
D&O保険は、会社役員が抱えるマネジメントのリスクを包括的に補償する。第三者から、役員個人が訴えられた場合、その訴訟費用から損害賠償金や弁護士費用をもまかなってくれる。
D&O保険の補償額は、1億円未満が最も多く9.1%で、全社を平均すると約5億円だった。日本の企業の補償額が少ないことについて、東京海上日動保険は「(実際に保険を使った企業のケースをみて)きちんとまかなわれたケースもあれば、不足したとみられるケースもありました」と話した。
同社の調べでは、D&O 保険の加入企業のうち、実際に「保険料を会社が全額負担している企業」は41%だった。
補償額は、大企業ほど高額に設定される傾向があり、3000人以上の大企業では平均9億5000万円。このうち、補償額を20 億円以上で設定している企業・団体も13%あった。
ここ数年、ハラスメントや不当解雇、過労死などで役員が株主から株主代表訴訟を提起されるケースが増えている。補償額が高額になれば、おのずと保険料負担も重くなるが、訴訟リスクへの備えは必ずしも十分とはいえそうにない。
加入は堅調 3年以内に27.4%
ただ、保険に加入する企業は、近年増えている。同社が7月12日に発表した「D&O保険の加入実態などに関する調査結果」によると、D&O保険への加入時期が、直近「1年以内」だった企業は9.8%、「3年以内」まで含めると27.4%となった。「中小企業も含めて、近年加入が堅調に増加する傾向にある」という。
D&O 保険に対する役員の認知度は63%で、保険会社の選定では、「補償内容」や「信頼度」を重視する傾向があるという。