数年前に父親を亡くした。当時、80歳代前半だった父は、実家で一人暮らしをしていた。持病もあったので、夕方に電話をかけ、安否を確認するのが日課だった。
暮れも押し迫ったある日、電話をしても応答がない。それまでにも買い物に出ていたり、入浴中だったりしていて、電話に出ないことも何度かあったため、1時間ほどして再び電話を入れた......
80すぎの父、「虫の知らせ」で駆けつけたが......
しかし、やはり応答はない。その時に限ってナゼだか「虫の知らせ」のようなものがあり、忘年会への出席を断り、実家に向かった。
比較的に都心に近いところに実家があったため、小1時間で到着すると、玄関には鍵がかかっているのに、室内は暖房が入り、テレビも点いている。だが、外から声を掛けても、何の反応もない。不審に思い、近くの交番に駆け込み、玄関の施錠を壊してもらい、室内に入った。
父は風呂に入り、幸せそうな顔をして亡くなっていた。検視の結果は、心臓発作だった。
筆者はこの時の印象が強いためか、「孤独死」と聞くと、独居老人を連想してしまう。しかし、意外にも孤独死は老人に限定して発生しているのではない。
公的な統計ではないが、日本少額短期保険協会が2017年3月に発表した、2015年4月から17年1月までに保険金が支払われた孤独死のデータ(1095人分)をまとめた「孤独死現状レポート」には、孤独死の意外な実態が明らかにされている。
このレポートでは、孤独死を「自宅内で死亡した事実が死後に判明に至った一人暮らしの人」と定義。それによると、孤独死の男女比はおおよそ男性8、女性2となっている。死亡時の平均年齢は男性が60.4歳、女性が59.7歳で、男女の平均は60.3歳。現在では、「老人」と呼べるような年齢ではないことがわかる。
死亡年齢層別でみると、最も多いのは男女ともに60~69歳で、その比率は男性で32.4%、女性で22.8%となっている。意外なことに、80歳以上では男性が6.3%、女性は16.5%にとどまる。
そして、何より予想外なのは、39歳までの比率が男性で9.8%、女性で17.5%と高く、ともに80歳以上のそれを上回っていることだ。つまり、孤独死は80歳以上の老人よりも、39歳までの若い層のほうに多く起こっているということだ。