「働き方改革」は大企業の話 社長、ホントにそう思ってるの?

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社長、「ワークライフバランス」はわかります?

   S社長が言う「けしからん」が、「言いたいことをハッキリ言いおって」と言う意味ならまだ納得なのですが、その先の受け答えから判断して「今の若者の『考え方』がけしからん」と言っているのは明白です。

   そうなると、それは今始まったことじゃありませんよ、と言うことになりそう。すなわち、「これからこういう連中と仕事をしなくてはいかんのか」と思って注意すべきは、彼らの仕事に対する考え方ではなく、彼らにハッキリモノを言わせている今の風潮でこそあるべきではないのか、ということになりそうです。

   それは、S社長がまだまだワークライフバランスやら「働き方改革」といった今の風潮に対する理解が乏しい、ということに。

   昔から中小企業の経営者にありがちなのが、世間で話題になっている企業がらみの出来事や決め事は、たいていは大企業のことであり自分たち中小企業には関係ない、という考え方です。

   少し前の時代であれば通用したかもしれないこの考え方は、今の時代ではとりわけ少しでもコンプライアンスに関わるような問題では通用しない、ということを意識しないと思わぬ痛い目に遭いかねないのです。

   大げさに申し上げれば、今回のS社長の「新社会人けしからん」という考え方だって、このままでいると大きなリスクがあるかもしれません。今後中途で入社する人ばかりでばかりでなく、今現在、会社で働く社員たちまでもが続々と「わが社は世間の常識レベルから見て、就労環境が悪いので辞めます」と言い出しかねない、という懸念を否定できないからです。

   S社長はごくごく標準的な中小企業経営者だと思います。社長は以前、こんな話もしていました。

「あのプレミアム・フライデーってなんだい。最終金曜日に社員を早く帰らせろだと。そんなもの大企業でしかできないだろうに。わかってないな~、政府は。国内全企業の99%以上は中小企業なんですよ。どこ向いてやってるんでしょう」

   中小企業経営者が、世間で話題になる企業がらみの出来事や決め事を、自らの問題として捉えられないのは、経営者の責任ばかりではなさそうです。政府の企業向け施策でのひと工夫も必要なのではないかと、思わせられるところでもあります。(大関暁夫)

大関暁夫(おおぜき・あけお)
スタジオ02代表。銀行支店長、上場ベンチャー企業役員などを歴任。企業コンサルティングと事業オーナー(複合ランドリービジネス、外食産業“青山カレー工房”“熊谷かれーぱん”)の二足の草鞋で多忙な日々を過ごす。近著に「できる人だけが知っている仕事のコツと法則51」(エレファントブックス)。連載執筆にあたり経営者から若手に至るまで、仕事の悩みを募集中。趣味は70年代洋楽と中央競馬。ブログ「熊谷の社長日記」はBLOGOSにも掲載中。
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