「縁故」採用のなにが悪い! 社長、問題はそこじゃない(江上剛)

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   中小企業で、採用担当をしています。ここ数年、大学や高校に求人情報を提供しながら人材を確保してきましたが、昨今の人手不足でなかなか応募がありません。待遇面もそれほど悪くないと思っています。そこで最近、縁故採用を考えるようになったのですが、これまでの経験やノウハウがありません。また、「縁故」のイメージがよくないせいか、社長も嫌っています(理由はよくわかりません)。江上さんは縁故採用について、どのようにお考えですか。

   縁故採用は悪くはないと思います。昔の企業はみんな縁故採用でしたからね。

  • 縁故採用は悪くない
    縁故採用は悪くない
  • 縁故採用は悪くない

ええっ!という有名人の子弟が働く、あるテレビ局

   どんな会社も表向きは「そんなことはしていない」と言っていますが、今だって中小企業、大企業を問わず、縁故採用はまかり通っているでしょう。

   以前、老舗出版社が、採用に関わる労力や費用の面を考えて、募集条件を縁故採用に限るとして話題をよんだことがありましたが、縁故採用の場合、その会社にあった水準の人材を集めやすいのです。紹介してくれる相手が、その会社のことを知悉していますからね。

   おそらく、イメージがよくないのは縁故採用だからではありません。問題は「縁故昇進」ですよ。

   入社してから能力もないのに縁故の影響で出世していく人がいます。これは最悪ですね。会社が内部から腐ってしまいます。

   私はあるテレビ局で仕事をしていますが、多くの有名人の子弟が働いていますね。ええっ! と思うような人の息子さん、娘さんがいます。

   たしかにある程度のチャンスは、他の一般の人より与えられるかもしれませんが、親の縁故を鼻にかけているような人はいません。皆、実力勝負で真剣に仕事に取り組んでいます。

   縁故には縁故なりのプレッシャーがありますから、仕事にも熱が入るのです。ところが、そこにさまざまな「評価」が加わり、その人の仕事ぶりを左右しはじめます。なかには、当然のように「勘違い」する人が出てくるわけです。

江上 剛
江上 剛(えがみ・ごう)
作家。1954年兵庫県生まれ。早稲田大学卒業後、第一勧業銀行(現・みずほ銀行)入行。同行築地支店長などを務める。2002年『非情銀行』で作家としてデビュー。03年に銀行を退職。『不当買収』『企業戦士』『小説 金融庁』など経済小説を数多く発表する。ビジネス書も手がけ、近著に『会社という病』(講談社+α新書)がある。
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