インターネットの普及で、いつでも手軽に地図情報を手に入れられる時代。すでに昔ながらの地図帳の販売などが鈍っている状況にあるが、地図情報サービスのゼンリンに薄日が差してきたようだ。
起爆剤になっているのは、自動運転や人工知能(AI)、ドローンといった新しい技術分野での活用。地図情報サービスの新しい展開がはじまっている。
東電HDの電線情報と地図を組み合わせると......
ゼンリンの2017年3月期連結決算は、売上高が前期比5.2%増の578億円、営業利益は39.4%増の42億円、純利益が52.9%増の24億円だった(5月8日発表)。地図帳の販売やスマートフォン向けの地図情報サービスは振るわなかったが、不動産などの業界に特化した、好採算の住宅地図データーベースのパッケージ商品で利用者数を積み上げたほか、国内のカーナビゲーション向けのデータ販売が伸びた。また、自動運転システムに関連する開発案件の受託も寄与した。
2018年3月期(通期)の売上高は3.8%増の600億円、営業利益は6.3%増の45億円、純利益は9.7%増の27億円を見込んでいる。5月9日付の日本経済新聞には、「顧客企業が営業や市場調査に使うパッケージ商品を拡充するほか、観光案内の電子看板など新分野を開拓する」とあり、見通しは明るい。
もともとゼンリンの業績は、景気の影響を比較的受けにくく、堅実だ。「地図情報」という地味な事業ではあるが、ここ数年はテクノロジーの最新技術との「マッチング」で、さらなる有効活用が見込めるようになった。
たとえば、2017年3月30日付の日経QUICKには、「ゼンリンが2か月ぶり高値 東電HDとドローンで提携」とあった。ゼンリンの3次元(3D)地図に、東電ホールディングス(HD)が保有する電力設備の情報を組み合わせて、安全な航路を導き出すことでドローンを配送などに使う際に電線やビルを回避しながら、安全に運びやすくする仕組みを構築。2019年度のサービス開始を目指すとしている。
ゼンリンは自動運転向け3D地図の分野で、すでに米エヌビデアと提携することが2017年1月に明らかになっていた。それもあって、「(ドローンに搭載される)自動運転や人工知能(AI)技術に関心を寄せる投資家の買いを集めてきた」という。
記事には、「ドローン技術へのニーズは高いが、技術や法整備の面でまだ実用化には壁がある」とあった。現状では多くの解決しなければならない問題を抱えているようにみえるが、東電HDとの提携は、ドローンの実用化に向けた一歩に間違えないと考えている。
ゼンリン株、高値圏 材料豊富でまだ上がるかも
さらに、2017年6月14日付の日本経済新聞は「3D地図会社に計37億円出資」の見出しで、産業革新機構と三菱電機、ゼンリンなどの7社が、自動運転用の精度の高い3次元(3D)地図データを研究、開発する「ダイナミックマップ基盤企画」(DMP、6月30日付で事業会社に変更)に、総額37億円を出資すると伝えた。
DMPは、約3万キロメートルに及ぶ日本全国の高速道路や自動車専用道路の3D地図基盤データをつくる計画で、将来的には一般道への拡大や世界展開も視野に入れるというから、この話自体、なにやらワクワクさせるし、ゼンリンの地図情報が活用されるのであろうから、同社の業績向上も期待できる。
今後は折りにふれて自動運転や人工知能(AI)技術の話題が、新聞などのメディアをにぎわすこともある。
日経平均株価が2万円台に乗った今、材料の豊富なゼンリン株も2017年7月4日に3420円の年初来高値をつけた。
遡って、過去10年の株価の推移をみれば2007年12月10日に3710円の高値をつけ、17年4月17日の2003円を起点に大幅高を演じて今日に至っている。
足元の株価上昇は期待先行かもしれず、そろそろ利食い売りが現れてもおかしくない価格。高値圏での投資対象として、もう少し下げたところで「買い」を入れ、2007年の高値3710円を目標に「売る」展開を考えている。
株式でも、なかなか楽しませてくれそうである。(石井治彦)
2017年7月5日現在 保有ゼロ
年初来高値 2017/07/04 3420円00銭
年初来安値 2017/04/17 2003円00銭
直近 終値 2017/07/05 3175円00銭