会社は「オーナー家だけのものでない」
タカタの場合も同じことが言えます。エアバッグ製品のリコールに関しては自動車メーカーにおんぶにだっこ状態であるのをいいことに、遅々として調査、改善に本腰を入れませんでした。さらには、自主再建の道が険しくなり会社整理の方向が見えた時点で、高田社長は執拗に私的整理にこだわるなど、会社の資産をいたずらに減らすことなく万が一の会社整理の段階に至ろうとも、創業家の利益を少しでも多く確保せんとする姿勢が見てとれました。
会社は誰のものか? 人が感情をめぐらせて会社経営をする限り、これは永遠不滅のテーマであります。経営者がいかに経営権を握っていようとも、創業家から見て他人である従業員、同様に他人である株主がステークホルダーとして企業に参画した段階から、経営者を含むオーナー家の利益を優先するような舵取りは、企業経営者として失格であると言わざるを得ないでしょう。
タカタの民事再生法の申請後に開かれた株主総会では、高田社長のあまりに身勝手な経営に対して批判が相次ぎ、「家屋を含めた私財を投げうって還元する気はないのか」との質問が投げかけられました。
しかし、これに対する社長の回答はなし。
先のO社廃業で職を失った元社員は、
「オーナー家が生き延びるために、われわれが犠牲になる、そんな理不尽な経営者についていった私がバカでした」
と無念の表情で話していました。
会社は誰のものか? この問いに、オーナー家だけのものでないということは、企業の大小を問わず、すべての経営者に認識していただきたい事実です。(大関暁夫)