社長の突然の病死に、次男N氏がとった手は......
会社の規模は全然違いますが、建築下請け企業O社は業歴約50年、従業員約30人の中小企業でした。15年ほど前のことですが、創業者が亡くなりその長男である二代目がその後を追うように突然病死し、次男N氏が思いがけず社長のイスに座りました。
しかし、元々が経営者になる心構えもなく、準備もなく、兄とは違い外交的でもなく、周囲も本当に彼で大丈夫なのかと心配顔で見守っていました。
ただでさえN氏の社長就任後、徐々に売り上げが落ちていた折も折、リーマンショックで受注が激減。会社は思い切った立て直しをはかるべき局面に立たされていました。しかしN氏が選んだ道は、なんと自主廃業。社員は唖然としました。「なぜ?」。社員から漏れた経営に対する非難は、「社長は会社の資産があるうちに一族で山分けした」というものでした。
つまり、このまま売り上げが減り、利益を減らしていけば数年後には債務超過に陥り、会社の資産をゼロにするだけでなく、下手をすれば社長は連帯保証人として負債の返済義務まで負わされます。
ならば、創業者、二代目が築き上げた資産があるうちに、株主である創業家で分配して会社は解散させてしまったほうが得策である、と考えたということです。いきなり職を失い、僅かばかりの退職金をもらっただけの社員はたまったものではありませんが、取り分を確保できた社長をはじめとする創業家の株主の面々は、今も悠々自適な暮らしを送っています。