高校野球の強打者である早稲田実業3年生、18歳の清宮幸太郎君がこの(2017年)5月に高校通算96号の本塁打を打ったとき、「100号は意識しないと言えばウソですが、気持ちを変えずにやりたい」と言ったそうだ。
この「意識しないと言えばウソですが」、つまり「・・・と言えばウソになる」式の表現は、なんとなくズルくはないだろうか。
ちょっと謙虚な感じでズルい!
本当はそうしたい、そうなりたい。でも、そうできない場合もあるだろうから、はっきりとは言わないでおこう。ちょっと謙虚な感じで、きれいごとを言ってすませよう。そんな感じがする。
しかし、清宮君は野球選手としてたぐいまれな才能を持っている。将来、日本の野球界を背負うだろう。それだけに、「100号を意識しています。なんとしても打ちたい」と言ってほしかった。現にその後、すぐに彼は100号を打っている。
また、朝日新聞(2017年6月24日付「フロントランナー」)によると、父がニュージーランド人、母が日本人の24歳のオニール八菜(やな)さんがパリ・オペラ座のバレエ団で、入団から3年も経たないのに第1舞踊手に指名された。
最高位エトワールに次ぐ地位で、最初はフランス語も話せなかった日本生まれのダンサーがここまで昇り詰めるのは異例だそうだ。
そのオニールさんはこれまでの苦労を振り返って「つらくなかったと言うとウソになる」と話している。でも、もっと素直に「つらかった練習に耐えたおかげで、ここまで来れました」とでも言ってほしかった。
この「・・・ と言えばウソになる」は年配者もよく使う。たとえば、最近まで文部科学省の事務次官だった前川喜平さん、62歳である。
周知のように、学校法人「加計学園」(岡山市)が四国の愛媛県今治市にある国家戦略特区に獣医学部を新設することになったが、これに安倍晋三首相が関与したかどうかが、いま大きな問題になっている。
獣医学部の新設を認めるか否かは、文科省の権限である。そして同省は獣医師は全体としては足りていることを理由に、新設にはかねて難色を示してきた。
一方で、加計学園理事長の加計孝太郎氏は首相の友人である。文科省で明らかになった文書には、加計学園に特区で獣医学部をやらせるのは「総理のご意向」だとか「官邸の最高レベルが言っている」ことだなどと記されている。