旅行業大手のエイチ・アイ・エス(H.I.S)は、改正通訳案内士法の施行に伴い、訪日外国人旅行者と通訳ガイドをマッチングさせるC to Cのサービスサイト「Travee(トラヴィ)」の運用を、2018年春から開始する。
2017年6月29日から、通訳ガイドの募集を開始。業界初の取り組みに、「すでに問い合わせが相次いでいる」と、HISの広報担当者は言う。
無資格ガイドも経験と努力しだいでガイド料がアップ
政府は、東京五輪開催の2020年に訪日外国人旅行者数4000万人、2030年には6000万人を目標に掲げており、国家資格を持った「通訳案内士」の不足が深刻化することが予想される。
そのため、インバウンドを支える受け入れ環境の整備を図るため、国家資格がなくても有償で通訳ガイドができるようにする「通訳案内士法及び旅行業法の一部を改正する法律案」が5月26日に成立した。
法改正に伴い、HISは訪日外国人旅行者と通訳ガイドのマッチングサイト「Travee」の運用を開始。急増する訪日外国人旅行者の受け入れ環境の充実に乗り出した。
「Travee」は20歳以上であれば、通訳案内士の資格がなくても、ガイドとして登録することができる。
「Travee」に登録された通訳案内士と、無資格ガイドはどのように差別化されるのか、J‐CASTニュースが6月29日、HISの広報担当者に取材したところ、
「ガイドは利用者のレビューによって評価されるため、有資格者は経験則から無資格ガイドよりも高いレビューを得られると考えられます。利用者は高いレビューのついたガイドに集まると想定されるので、多くのマッチングを獲得できるはずです。無資格の方も経験を積むことで、より高いレビューを得られるようになっていくと思います」
と説明。本人の経験や努力しだいで評価を高めていくことができる仕組みをつくったことで、懸念されている無資格ガイドによる「質の低下」も払しょくできるとみている。
ガイド料も、その評価などによって変わる。広報担当者によると、「サイト運営開始からしばらくは3000円~4000円程度で大差ないだろう」という。
HIS公認の「Traveeガイド」を選定
さらに、HISのスタッフとの面談や講習会を通して公認の「Traveeガイド」を選定するなど、質の高いガイドの育成にも取り組むほか、通訳ガイドを増やしていくため、自治体とも連携する。
現在、通訳案内士には、都道府県の区域内でのみ通訳案内を行える「地域限定通訳案内士」(2006年4月導入)と、全国20地域で導入されている「特例通訳案内士」(2012年4月導入)の2つの地域ガイド制度があり、自治体と協力して通訳案内士を増やす取り組みを進める。
「Traveeガイド」は、初年度に有資格者と無資格者あわせて500人を登録。マッチング数は5000回を目標としている。
HISは今後、全国で約500の観光プランをつくり、ガイドの情報とともに順次サイトで公開していく。現在、日本語と英語のみのサイト対応言語も徐々に増やしていく。