以前から、たびたび当コラムに登場しているわがパートナー「ヒモさん」。20代は歌舞伎町でホストをしており、私と出会ってもうすぐ2年になる男だ。
そんなヒモさんと先日、スーパーでふと「レミーマルタン」なるブランデーを見つけた。約3000円。「あ、これ知ってる! ホストクラブでよく出るやつでしょ? 確かルイ13世......」と、なけなしの知識を披露したところ、元ホストのヒモさんがいろいろと解説してくれたのである。ホストクラブの「お酒事情」、ちょっと知りたくありませんか――。
甘美で危険な香り!?「レミーマルタン ルイ13世」
ホストクラブという場所は、人生で1度は行ってみたいと思わせるギラギラした何かがある。そこでおそろしい金額の売り上げを達成していたヒモさんに、私はかなり興味をもっているのだ。
彼はホストクラブのお酒について、分かりやすく説明してくれた。
「ルイ13世は、レミーマルタンのもっと高いやつだよ。店では20~30万くらいで酒屋から卸して、お客さんには100万くらいで出してたかな。酒の値段は年々、上がってるから、俺がホストをしてたときより今のほうが何十万も高いとは思うけど......」
ああ、レミーマルタン、ルイ13世。なんと甘美で危険な香りのする響き...... 思わず、ボ~っとしてしまう。そのさらに上のモデルは「ルイ13世ブラックパール」というらしく、ヒモさんも見たことがないらしい。
「ブラックパールはホストクラブじゃほとんど出ないよ。出るとしたら銀座かな~。ホステスのお客さんが男性客に入れてもらった写真を見せてもらったけど、1000万くらいだと思う」
ひぃーー!! まさに「欲望と資本主義」の世界だ。数百万から1000万のお酒は、いくら売れっ子ホストでもそうそう入れてもらうことはないという。
「リシャール」「ロイヤルバカラ」に頭がクラクラ
ホストクラブでよく出るのは、何といってもシャンパンだ。
「1番よく出てたのはシャンパンで、モエとかヴーヴ・グリコかな~。俺のときは3万くらいで、途中から3万4000円に値上がりしたけど、かなり安いほうだよ。あとはドンペリ。白で8万くらい、ブラック、ピンク、ゴールドと値段が上がっていって、最高級のプラチナだと100万くらいかな~」
すでにめまいを起こしそうだが、ブランデーはもっとすごい。
「リシャールは当時120万くらいで入れてもらったことあるけど、今はもっと値上がりしてると思うよ。え、カミュのロイヤルバカラはいくらかって? うーん、月末締め日にもらったことがあるけど、ちょっと安くて90万くらいだったかな~、もう忘れちゃった」
というヒモさん。頭がクラクラしてくる。
「他にはどんなお酒があるの? 教えてよ~! ホストクラブに憧れがあるんだからさ」としつこく尋ねる私に、
「(バースデーイベントや月末など)数字を狙ってるときは高いやつ入れてもらうけど、俺、そもそもワインが好きだったから...... シャンパンとかブランデーはあんまり入れてもらってなかったんだよね。って前も北条さんに説明したでしょ! 『ワインに詳しくなりたい』って言うから、いろいろ解説したじゃん! もう忘れたのかーーーーーっ!!」
いやぁすまん! と謝って気がついた。
私はホストクラブのお酒自体に興味があるのではない。No.1ホストだったヒモさんの、キラキラした思い出と栄光に惹かれているんだな。だって、リシャールや高級ワインを入れてもらってるときのヒモさんなんて、絶対カッコイイに決まってる!
私はそんな、元No.1ホストのイケメンと街を歩けることに、甘美なナルシシズムを感じているのであろう。これが女の業ってやつかどうかは分からないが、我ながらしょうもない。(北条かや)