長寿企業は「不易」「流行」の二兎追う 社長のバランス感覚、大丈夫?

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   私が主宰する交流フォーラムに国内有数の長寿企業の経営者をお招きして、その経営姿勢に関するお話をうかがい、長寿経営の秘訣を学ばせていただきました。

   お招きしたのは、室町時代末期から続く名門酒造T社の十六代目経営者Yさん。酒店から発祥して酒造りに展開され、現在は総合酒類製造販売業を営んでいます。

  • 約400年続く名門酒造は、現在も「進化」している(写真は、イメージ)
    約400年続く名門酒造は、現在も「進化」している(写真は、イメージ)
  • 約400年続く名門酒造は、現在も「進化」している(写真は、イメージ)

長寿企業の歴史は「不易流行」の繰り返し

   名門酒造のT社は約400年の社歴において、幾多の浮き沈みがあったであろうことは想像に難くありません。YさんがT社の沿革を紐解く中で、何度も口にしたキーワードは「不易流行」というものでした。

   「不易流行」。江戸時代の俳人、松尾芭蕉が提唱したと言われる俳諧理念で、「不易」とは永遠に変わることのない伝統やしきたりを意味し、「流行」とは常に新しさを求めて機敏に変化する様を意味しています。

   一見すると相反するかのように思えるこの二つの言葉ですが、風雅に根ざす根源は同じであり、共に同じように大切にすべきものである、と芭蕉は説いたのだと言います。

   会社経営にこの「不易流行」の考え方をあてはめられるのであれば、企業としての社会的使命をしっかりと認識したうえで築かれた創業の精神や基本理念を脈々と受け継ぎ、経営の舵取りをしつつも、常に時代の流れを察知しながら、新しい試みにチャレンジしていく姿勢を忘れない、そんなところになろうかと思います。

   T社の場合には、お酒造りに決して手を抜かない、飲んでくれる方々の喜びを第一に考えてものづくりに精進する、というのが「不易」部分であり、一方で新種の酒米やさまざまな酵母を使った新たな日本酒づくりへのチャレンジや海外向けの通販サイトのオープンなどは、「流行」を担う精神であると言えるでしょう。

   脈々と続く長寿企業の歴史は、そんな「不易流行」の繰り返しに支えられてきたのだと、実感させられる話でありました。

大関暁夫(おおぜき・あけお)
スタジオ02代表。銀行支店長、上場ベンチャー企業役員などを歴任。企業コンサルティングと事業オーナー(複合ランドリービジネス、外食産業“青山カレー工房”“熊谷かれーぱん”)の二足の草鞋で多忙な日々を過ごす。近著に「できる人だけが知っている仕事のコツと法則51」(エレファントブックス)。連載執筆にあたり経営者から若手に至るまで、仕事の悩みを募集中。趣味は70年代洋楽と中央競馬。ブログ「熊谷の社長日記」はBLOGOSにも掲載中。
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