私はこれまで、「英語がペラペラ」なのに「英語で失敗する人」を数多く見てきました。
今回は「Yes」「No」の使い方を間違えて恥をかいてしまった、エリート駐在員をご紹介します。さて、英語が得意な彼はなぜ、「Yes」「No」で失敗したのでしょうか?
ホントに「No」でいいの?
ニューヨーク、ロンドンと海外ビジネスの現場を渡り歩き、自他ともに認めるエリート駐在員と英国企業を訪れた時のことです。事前の交渉がスムースにまとまり、あとは契約書にサインをするだけ、という局面で「事件」は起きました。
契約書の内容を説明し終えたイギリス人弁護士が、最後の念押しをします。
「Don't you agree with this ?」(同意しないですか?)
契約書の内容に満足したエリート氏は、満面の笑みを浮かべてこう答えました。
「No! I agree 」
「あ~あ、やっちゃった!」
二人のやり取りを聞いていた私は頭を抱えました。
イギリス人弁護士の質問は否定疑問文で、「もちろん同意しますよね?」というニュアンスを含んでいます。
じつは、英語と日本語では、否定疑問文への答え方が異なります。「Yes」と「No」が逆になり、次のどちらかの答え方しかありません。
「Yes, I agree」 (いいえ、同意します)
「No, I don't agree」 (はい、同意しません)
「いいえ、同意します」という日本語を直訳してしまったエリート氏。「Yes, I agree」と言うべきところを「No」と言ってしまい、「同意するのかしないのか」真意がわからない返答になってしまいました。
困惑した弁護士が「Yes or No?」(同意しますか? しませんか? )と、何度問いかけても、「No!」(同意しません!)を繰り返す始末。しかも、自分では「同意する」と言っているつもりですから、笑顔を浮かべたままです。
最後は、「同意するのか、しないのか、いったいどっちなんだ!」と、相手を怒らせてしまいました。取引が中止になったことは言うまでもありません。