日銀の金融緩和策 自信の「出口戦略」も、黒田総裁の甘い見通し

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足かせとなる政府・日銀の「共同声明」

   こうした出口戦略の危うさは、与党・自民党でも問題視されている。河野太郎議員が本部長を務める自民党の行政改革推進本部は2017年4月19日、「日銀の金融政策についての論考」と題する提言書を官邸の菅義偉官房長官に手渡した。

   その中で、日銀の、とりわけ出口戦略に伴うリスクなどの分析に関して、「市場との対話をより一層円滑に行うことを求めたい。これまで日銀は、物価目標の達成時期を5度変更しており、市場と日銀の意思疎通が円滑でなくなっている可能性がある。出口戦略を議論することは時期尚早との意見もあるが、少なくとも事前にリスクなどを分析し、市場と対話を図ることは必要といえる」と指摘している。

   さらに、「日銀の出口戦略の際の最大のリスクは金利の急激な上昇である。市場が政府の財政健全化策に懐疑的になれば、国債価格は下落し金利が上昇する。そうなれば、秩序だった出口戦略はますます困難になる。万が一の場合に備えて、日銀が債務超過に陥った際の政府との取り決めを検討していくことも、市場の安心感につながるとも考えられる」としている。

   日銀の出口戦略は多くの問題点を内包したまま、黒田総裁から次期総裁の手に引き継がれる可能性が高い。そして、その実現は容易なものではない。なぜならば、日銀が自らの意思だけで出口戦略に進むことはできないからだ。

   黒田総裁が異次元緩和と呼ばれる量的質的金融緩和に踏み出した際の政策目標である消費者物価の2%達成は、2013年1月の政府・日銀の共同声明に盛り込まれており、「縛り」がかかっている。もし、日銀が出口戦略に進もうとするならば、この共同声明の見直しを行う必要があるだろう。

   つまり、安倍晋三首相の了解が得られ、共同声明見直しの合意がなければ変更は難しい。日銀は「市場との対話」による市場の理解を得るだけではなく、「政府との対話」による政府の理解も得なければ、出口戦略に踏み出すことはできない。(鷲尾香一)

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