ビジネスで英語を使うシチュエーションを、次の3つに分けてみました。みなさんは、どれが一番「難しい」と思いますか?
(1)英語でプレゼンテーションをする(スピーチをする、など)
(2)外国人と英語で商談をする(ミーティングに参加する、電話で話す、など)
(3)取引先や同僚と英語で雑談する(パーティーや会合で、職場で、など)
「ペラペラ」なのにビジネスができない人の英語
意外に思われるかもしれませんが、この3つのシチュエーションの中で、一番難しいのは(3)の「英語で雑談」です。
英語によるビジネスの際、たいていの人はあらかじめ「想定問答」を用意すると思います。しかし、一番困るのは会話の展開が予想できずに「想定問答」が通用しない「雑談」なのです。
どんな球(話題)が飛んできても、臨機応変に打ち返すには相当な英語力が必要です。私は、ビジネスから離れてプライベートな話題になったとたん、毎回ヒヤヒヤしています。
次に難しいのが(2)の「英語で商談」です。
(1)の「英語でプレゼンテーション」は、台本があれば乗り切れます。スピーチや講演も同じ。質疑応答があっても、事前に「想定問答」を暗記しておけば大丈夫。「台本」と「想定問答」をしっかり準備しておけば、致命的な失敗にはならないでしょう。
ところが、「商談」になると難易度が一気に上がります。相手の立場や発言を理解しないと交渉は成り立ちません。「今日は○○について議論(交渉)する」という目的がハッキリしているので「想定問答」が通用しますが、思いどおりに展開するとは限りません。
「商談」では、相手の意図を理解して自分の意見を正しく伝える力、つまり「コミュニケーション力」が必要になります。
日本人のビジネスマンで多いのが、「英語はペラペラなのにビジネスができない」人です。このタイプの特徴は、プレゼンはうまいけど商談や雑談ができないこと。一方的にしゃべるのは得意でも双方向の会話ができない、つまり「コミュニケーション力」に欠けているのです。
私の元上司もそうだったのですが、自他ともに認める「英語の達人」で、スピーチは大の得意。難解な単語や回りくどい言い回しを好み、「俺はこんなに英語ができるんだぞ!」と、ドヤ顔でペラペラと話します。
ところが「商談」になったとたん、彼の実力が発揮できません。一方的にダラダラと話すだけで、何を言いたいのかわからない。イライラした相手が「もういい、結論は何だ?」と声を荒らげることも一度や二度ではありませんでした。
それでも自分の英語力に自信満々の彼は、「やっぱり、僕の英語は高度すぎたかな?」と反省する気はゼロ。私のつたない英語のほうが、商談がスムースに進んだことは驚きでした。
ビジネスはコミュニケーションで成り立っています。英語はあくまでもツールですから伝わらなければ意味がない。私が、「シンプルな英語で正しく伝えることがビジネスの基本」だと断言する理由がここにあります。
「OK」か「NO」か それがビジネス英語の第一歩
それでは、「中学英語」のビジネスでの具体的な使い方をご紹介していきましょう。
外国の方とのビジネスは、「OK(賛成)」か「NO(反対)」か、立場をハッキリすることからスタートします。
自分のスタンスを伝えるだけではなく相手のスタンスを確認することも大切です。
※ 「OK(賛成)」を表す表現
○ 動詞を使う
「like」(気に入る)「accept」(受け入れる)「support」(支持する)「agree」(同意する)
I like your idea. (ご提案が気に入りました)
I accept your idea. (ご提案を受け入れます)
I support your idea. (ご提案を支持します)
I agree with (to) your idea.(ご提案に同意します)
(注)「Agree」は自動詞なので、目的語の前に前置詞が必要です。
○ 前置詞「for」を使う
I am for your idea.(ご提案を支持します)
○ 名詞「favor」を使う
I am in favor of your idea.(ご提案に賛成です)
※ 「NO(反対)」を表す表現
○ 否定形「not」を使う
先に紹介した「OK(賛成)」を表す動詞を、「not」を使って否定する表現が「簡単で分かりやすい」のでオススメです。
I don't like your idea. (ご提案が気に入りません)
I don't accept your idea. (ご提案を受け入れられません)
I don't support your idea. (ご提案を支持しません)
I don't agree with (to) your idea.(ご提案に同意しません)
○ 前置詞「against」を使う
I am against your idea.(ご提案に反対です)
「oppose」「disagree」など「反対する」という意味の動詞も覚えておきましょう。
ただし、これらの動詞は「強く反対する!」というニュアンスですので、会話ではあまり使わない方が得策です。必要以上に「強い反対」だと受け止められて、コミュニケーションに支障をきたす可能性があります。
わざわざ単語を覚えなくても、否定形を上手く使えば表現の幅が広がります。「正しく相手に伝える」ことを最優先して、「シンプル・イズ・ベスト」のテクニックを磨いていきましょう。(井津川倫子)
今週のニュースな英語 ~ メイ英首相に「for」? 「against」? ~
2017年は選挙で世界が動く年です。
5月のフランス大統領選に続いて、6月は英国で議会(下院)総選挙が行われ、メイ首相率いる保守党が手痛い敗戦を喫しました。
メイ首相は「snap election」(解散総選挙)に打って出るという「賭け」に負けて、まさかの過半数割れ。メイ首相のEU離脱方針に反対する20~30代の若者票が、ライバルの労働党に流れたと分析されています。
メイ首相に「投票する」は、前置詞の「for」を使います。
I vote for May.(私はメイ首相に投票した)
メイ首相に「反対票を投じる(他党に投票する)」は、「against」で表せます。
I vote against May
「for」と「against」は、セットで覚えておくといろいろな場面で使えて便利です。
ちなみに、9月にはドイツで選挙があります。メルケル首相が再任されるのか、その結果に注目が集まっています。