海外を飛び回るビジネスマンや通訳者など、ふだんから英語を使いこなしている「英語のプロ」は、外国人相手にどんな英語を使っているのでしょうか?
意外なことに「英語のプロ」は、「中学生レベルの英語で十分通用する!」と、口をそろえます。果たして、本当に「中学生レベルの英語」で世界に通用するのでしょうか。
あなたは「英語ができる人」?「できない人」?
まずは、あなたが「英語ができる人」「いつまでたっても英語ができない人」、どちらの予備軍なのか、チェックしてみましょう。
次のチェックボックスのうち、当てはまるものがいくつありますか?
□英語の学習は、単語を暗記することからスタートする □単語を覚えられないから英語がキライだ □語彙が少ないことにコンプレックスを抱いている □自分の語彙力で外国人とビジネスなんてムリ □国連の人たちは、難易度が高い単語を使いこなしていると思う □TOEIC900点以上の人は、単語を1万語以上覚えていると思う
もうお分かりだと思いますが、チェックが多い人ほど「英語ができない人」になる可能性が高くなります。
英語の学習法について相談を受けるようになって一番驚いたのは、あまりにも多くの人が「単語を暗記しないと英語ができない」と信じていることでした。
TOEICにしろ、ビジネス英語にしろ、「まずは単語の暗記から」と単語集を購入して必死に覚えます。そして一様に、「単語が分からないからムリ」と、外国人に話しかけたり、海外ニュースのような「生きた英語」に触れたりすることをためらうのです。
かくいう私も、以前は「ビジネス英語頻出5000語」「TOEIC必須10000語」といった単語集を何冊も暗記しようとしては、途中で挫折していました。語彙の少なさにコンプレックスを抱いて、「自分は英語ができない」と思い込んでいました。
ところが、海外ビジネスの場に足を突っ込んでみたら、単語コンプレックスがいかにムダか、ということを痛感しました。ビジネス英語の基本は「語彙力よりもわかりやすさ」。優秀なビジネスマンほど、簡単な単語を駆使してわかりやすく伝えることを最優先していたのです。
単語の数と、英語の実力は比例しない。
そう悟った私は、分厚い単語集をすべて処分して、わからない単語に出会ってもできるだけ辞書を使わずに、「自分の語彙力」で英語を読んだり話したりする力を鍛えました。
難しい単語を知らなくても世界で十分通用する。今なら自信を持って、そう断言できます。
ビジネス英語は「相手に正しく伝わってなんぼ」
マネックス証券の松本大会長は、「私が使っている英単語や文法は中学1~2年生レベルのものばかり」で、「中学生レベルの英語でも世界で仕事ができる」とインタビューで語っています。また、ソフトバンクの孫正義社長は、「『中学英語』で、堂々と世界のトップと交渉する」と、元側近が披露しています。
最近話題の本「会話もメールも 英語は3語で伝わります」の著者・中山裕木子氏(特許翻訳者/技術英語講師)は、「中学レベルの単語を使ったやさしい英語ほど相手に伝わる」と、強調しています。
ビジネスの英語は「シンプル イズ ベスト」。相手に正しく伝わってなんぼ、の世界ですから、簡単でわかりやすいことが最優先です。難しい言いまわしよりも、むしろ中学生レベルのシンプルな英語のほうが重宝されます。「英語のプロ」ほど、「中学英語」にこだわるゆえんです。
私は、文法もさることながら、単語は特に「簡単さ」にこだわるべきだと思っています。英語はビジネスの共通語ですが、必ずしも相手がネイティブだとは限りません。今や、中国やインド、アフリカ、英国以外のヨーロッパ諸国出身のノンネイティブが世界のビジネスを動かしています。
グローバルな時代ですから、米国や英国の企業の幹部がノンネイティブなこともざら。ノンネイティブにも正しく伝わる「簡単な単語を使ったわかりやすい英語」がビジネス界の潮流なのです。
国連に勤務する人たちの英語は、「わかりやすい英語」の手本といわれています。
世界中の人たち(ほとんどがノンネイティブ)が理解できるように、簡単な単語と単純な構文でわかりやすい英語を話す(書く)ことを徹底しているからです。
「英語ができない」と嘆いている人ほど、難しい単語や言い回しを必死になって暗記していませんか? 分厚い単語集はとっとと断捨離して、「中学生レベルの単語」で表現力を磨くことが「英語ができる人」になる近道です。
次回から、「中学生レベルの英語」の具体的な使い方について紹介していきます。
お楽しみに!
今週のニュースな英語 ~ トランプ米大統領 パリ協定から「withdraw」 ~
何かとお騒がせな米国のトランプ大統領が、今度はパリ協定からの脱退を表明して、またしても世界中を震撼させました。
日本のニュースでは「脱退」と訳されていますが、トランプ大統領はスピーチで「withdraw from the Paris accord」(パリ協定から撤退する)と、「withdraw」という単語を使いました。「引き揚げる」といったニュアンスが漂います。
それにしても、「withdraw」はいろんな場面で使われる汎用性の高い単語です。 銀行口座から預金を「おろす」、カーテンを「引く」という意味もあれば、訴訟を「取り下げる」、視線を「そらす」という意味もあります。軍隊が撤退する時も「withdraw」です。
何となく、後ろ向きなイメージを抱いてしまうのは、私だけでしょうか?