カンボジアでカレー屋を体験をしたら、アジアに興味を持ち、アジア各国を夏休み、冬休みを使って放浪。そんな彼が、大学の特待生として留学した香港で、衝撃を受けます。
香港の有名大学のクラスメートは、香港人や中国人が中心で、欧米人が何人か混ざっている状態です。授業は当然、英語。そんな状況で彼はいろいろ打ちひしがれていきました。
「香港人と中国人が優秀すぎるんですよ」
「欧米人に英語で負けるのはわかる。でも、香港人や中国人にも圧倒的に負けてるんです。彼ら、ものすごく勉強しています。そして、それだけではなく、授業の回答でも負けてるんです。もう、圧倒的に色々なことを知っているし、それを自分の意見としてプレゼンテーションをすることもできる。私を含む日本の大学の大学生とは、ケタが違いました」
日本人の英語力のなさは世界中で有名ですが、こういう大学に来ると、さらに顕著になります。
「他の学生は、見ている世界が完全にグローバルなんです。日本に生まれたからには、日本の大学を出て、日本で働くのが当たり前って考えていた自分が浮くくらい。はじめから、世界のどこで働くのか? 世界のどこで商売をするのか? って所から考えている。自分が今まで受けていた教育ってなんだったんだろうって、そこから考えてしまいました」
と、彼は言います。
香港人は、いつ国の形態が変わるかわからないというプレッシャーに晒されており、それゆえに自分はどの国でどうやって生きていくかをずっと考えている。
日本人は、これから日本の人口が減っていくからどうしようどうしようと言っているだけで、具体的に日本以外で...... とか、自分はこうやって生きていくのだと考えている人はごく少数です。
いうても、まあなんとかなるだろうとタカをくくっているのか、そんなことを考える素養もないのかはわかりませんが、彼にとって真剣に将来生きる場所を探す香港人の様子は、彼には衝撃的だったようです。
「そして、中国人が本当に優秀なんです。英語の発音などはともかく、自分の確固たる意見を持っていて、それを踏まえて極めて論理的に、わかりやすく意見を話す。同じ年の学生とは思えないくらいでした」と続ける。
日本人の中には、中国の安かろう悪かろう製品を見て、「日本人より中国人のほうがバカ」と決めつけている人もたくさんいます。もちろん、粗悪な製品だけを作っているダメな中国人もいますが、中国のトップ層、特に若い人たちは、日本人よりも遙かに優秀です。
そして、多くの中国人が新しいサービスを開発し、大手企業の社長になり、といったように、世界の最高峰に立っています。
彼はそんな経験を1年して、「早く海外で働きたいと思いました。日本で就活をするも、日本企業に入って海外駐在員になるには3年かかる。だから、もう、新卒で直接海外に行くことにしたんです」
世界中にある「ナンバーワン」になれる場所
私は海外で働きたいという人から、よく相談を受けます。
新卒で海外に行きたいという人にもよく相談されるのですが、そういう人には新卒で海外行くことのデメリットをたたき込みます。それを聞いても海外に行きたい! と言う人はぜひ行ってほしいと考えています。
自分が不利であると言うことを知っていて、それでも乗り越えてやるというパッションがあれば、何でも乗り越えられると思うからです。
香港に留学した彼は、「新卒海外就職は、ビザの面でいろいろ大変でした。最初、ベトナムの会社に内定をいただいたのですが、渡航直前になって業績不振のため内定取消なんてこともありました。そして結局、インドの会社に就職することになりました。カンボジアに行った時はインドなんて、まったく考えていなかったのに...... 」と、話します。
インドは、みなさんが想像しているほどではないにせよ、タフなところです。首都・ニューデリーは、気温は高いし、空気は汚い。多くのインド人はタフネゴシエーターですし、法律は難解であるうえに年中変わる。
最近でも、いきなり高額紙幣が使えなくなったり、駅のまわりでお酒の販売が禁止になったりなんてことが起こりました。
「でも、2022年には世界一の人口になるインドが成長しないわけがない。まだ、インドに精通している日本人は少ないので、その分野でトップクラスの人材になりたいんです」と、彼は断言します。
インドで、財務や会計、法律などを取り扱うコンサルティング企業に入った彼は、1年間ニューデリーで業務を覚えた後、インドのどこかの州に異動になり、そこで日本人一人の環境の中で働くことになるそうです。
「インドは州ごとに法律から言語から宗教まで違う国。だから、自分が派遣された州に関して、日本人でナンバーワンの知識をもつこともできると思うんです」
「ナンバーワンよりオンリーワン」ということは、ずっと前から言われています。しかし、オンリーワンというのは、限られた分野の中でのナンバーワンであると言うことです。
彼のように世界を広げてみると、「ナンバーワン」をとれる場所はたくさんあります。視野を広く、世界を見て行動すると、まだまだ我々日本人にチャンスはいっぱいあるんです。