お願い!買ってぇ!!「たまごっち」 20年の時を経てよみがえる渇望感

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「ぎゃおっぴ」の誘惑

   5000円のお年玉を握りしめて訪れたジャスコには、すでに「たまごっち」は売っていなかった。私が両親に「買ってくれ」と訴え続けている間に、ブームは終わりかけていたのである。その代わり、オモチャ売り場には「たまごっち」の類似品がたくさん並んでいた。確か「ぎゃおっぴ」という名前で、たまごっちよりひと回り大きいがほとんど同じだ。 あれだけ欲しかった「たまごっち」と瓜二つの商品。「これを買おうか」と思ったが、すんでのところで踏みとどまった。周囲から「アイツは、たまごっちが買えないから『ぎゃおっぴ』で妥協した」と思われるのは悔しい。本当は類似品でもいいから、たまごっちのようなもので遊んでみたかったが、ギリギリのプライドに支えられていたのだろう。

   冬休みが明けて登校してみると、女子たちの間で「隣のクラスの○○君が、『ぎゃおっぴ』を持っていた」という話題で持ちきりであった。「ぎゃおっぴって、ニセモノ?」と笑う友人を見て、「ああ、一時の迷いで類似品を買わなくてよかった」と安堵したのはいうまでもない。

   あれから丸20年経ったが、私は今でも「偽ブランド品」だけは買わないと決めている。

   もしあの時「ぎゃおっぴ」を買っていたら、私は「CHANEL」欲しさに「CHANNEL」を買う女になっていたかもしれない。たまごっちブームに感謝しているのはそれくらいだ。

   せいぜい2000円のオモチャが死ぬほど欲しかった幼少期の私には、「どうせすぐにブームが終わるんだから、ガマンしろ」と叱ってやりたい気もするが、同じことを言っていた両親には、「2000円の『たまごっち』くらい、買ってやってもよかったのではないか」と思ったりする。(北条かや)

北条かや
北条かや(ほうじょう・かや)
1986年、金沢生まれ。京都大学大学院文学研究科修了。近著『インターネットで死ぬということ』ほか、『本当は結婚したくないのだ症候群』『整形した女は幸せになっているのか』『キャバ嬢の社会学』などがある。
【Twitter】@kaya_hojo
【ブログ】コスプレで女やってますけど
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