ビジネスやニュースで使われる「生きた英語」を読み解くポイントは、ズバリ!「動詞」です。
動詞さえ分かれば、たいていの英文は意味が分かります。とりわけ「辞任」「昇進」といった「人事」をあらわす動詞はビジネスの頻出単語。40代のやり直し英語は、人事にまつわる動詞から攻略しましょう。
「退任」から「クビ」まで、「辞める」はニュースで連発される!
まずは、職や地位を退いたり辞めたりする時に使われる「動詞」です。最近も、公務からの引退を宣言した英国のエジンバラ公から、米国のトランプ大統領から突然解任されたコミー前FBI長官まで、いろんな「辞める」が話題になりました。
たとえば......
エジンバラ公は... 引退する「retire」「step down」
The Duke of Edinburgh is retiring ( stepping down ) from royal duties.
(エジンバラ公が王室公務から引退する)
天皇陛下は... 退位する「abdicate」
日本の天皇陛下のご退位報道には「step down」のほかに、「abdicate」が使われました。
Emperor Akihito is expected to abdicate in December 2018.
(昭仁陛下は2018年12月に退位される予定だ)
故スティーブ・ジョブズ氏は... 去る「leave」、追い出す「kick out」
任期満了で辞める時に使う「retire」と比べて、「leave」には意に反して去るというニュアンスが加わります。故スティーブ・ジョブズ氏が自ら設立したアップル社を去った時は、「leave」のほか、「kick out」(追い出す)」まで登場しました。
Steve Jobs left Apple in 1985.
(スティーブ・ジョブズ氏は1985年にアップル社を去った)
Steve Jobs was kicked out of Apple in 1985.
(スティーブ・ジョブズ氏は1985年にアップル社を追い出された)
ちなみに、ジョブズ氏自身は後日、スタンフォード大学の卒業式で行ったスピーチで、「I was out」(私は追い出された)と表現しました。「I left」(私は去った)と言わなかったところに、ジョブズ氏の強い憤りを感じます。
ユナイテッド航空の社長は... えっ、辞任しないの?「resign」
乗客引きずり下ろし事件で話題になったユナイテッド航空の最高経営責任者(CEO)のオスカー・ムニョス氏は、世間の予想に反して(?)「辞任しない」ことが話題になりました。
United Airline's boss Oscar Munoz will not resign.
(ユナイテッド航空のオスカー・ムニョス氏は辞任しない意向だ)
コミー前FBI長官の解任劇は...「fire」「dismiss」「replace」!
President Trump has fired FBI Director Comey.
(トランプ米大統領は、コミーFBI長官をクビにした)
James Comey was dismissed from his post as FBI director.
(ジェイムス・コミー氏は、FBI長官の職を解任された)
James Comey will be replaced by someone who will do a far better job.
(ジェイムス・コミー氏は、他のもっとすぐれたヤツに差し替えられるだろう ※トランプ氏がツイッターでつぶやいた原文ママ)
「fire」クビにする、「dismiss」解雇する、「replace」差し替える、いずれも「辞めさせてやる!」という強い意志を感じさせる動詞です。本人の意志に反して辞めさせるわけですから、他動詞を使うのですね。わが身には降りかからないようにしたいものです。
「昇進する」は何て言うのか?
世の中、クビになったり、辞めさせられたりする人ばかりではありません。大統領から会社のトップまで、就任したり昇進したりする「出世に関わる動詞」にも要注目です。
さっそく、見てみましょう。
「elect」(選ぶ)
Emmanuel Macron was elected president of France.
(エマニュエル・マクロン氏がフランス大統領に選ばれた)
選挙や投票で選ばれた場合は「elect」です。会社のトップが役員会で選出された時なども「elect」を使います。
「appoint」任命する
「appoint」(任命する)もよく使う動詞です。文法的な解説をすると、SVOC(sは主語、vは動詞、oは目的語、cが補語)の構文をとる動詞ですから「appoint」の後ろに前置詞はつけません。私はつい「as」や「to」をつけそうになって、あわてて言い直すことがあります。
I was appointed chairperson of the committee
(私は委員会の議事役に任命された)
後ろに不定詞を使うこともあります。
I was appointed to chair the committee.
(私は、委員会の議事進行をするように任命された)
「nominate」指名する
「nominate」(指名する)も覚えておきましょう。
Trump nominated ExxonMobil CEO Rex Tillerson as secretary of state.
(トランプ氏は、エクソンモービル社CEOのレックス・ティラーソン氏を国務長官に指名した)
「promote」昇進させる
I was promoted to general manager.
(私は、ゼネラルマネジャーに昇進した)
サラリーマンの目標、「昇進」は「promote」を使います。
そういえば、「任命する」も「昇進させる」も「指名する」も、すべて他動詞です。なるほど、自分の意志で「辞める」ことはできても「昇進」はできない、ということですね。
他の誰かに引き上げてもらわないと「出世」はできないと、サラリーマンの宿命を思い知らされました(笑)。(井津川倫子)
今週のニュースな英語 ~ 世界一有名な中退者(dropout)、ハーバード大を卒業! ~
フェイスブックのマーク・ザッカーバーグ最高経営責任者(33)が、ようやく母校ハーバード大学から学位(名誉博士号)を受け取りました。
2005年にハーバード大を「drop out」(中退)してフェイスブックを立ち上げたザッカーバーグ氏は、世界で最も有名な中退者(dropout)の一人。マイクロソフトの共同創業者のビル・ゲイツ氏も、同じくハーバード大中退ですが、世界長者番付の1位(ゲイツ氏)と6位(ザッカーバーグ氏)が、ともに「大学中退」というのは興味深いですね。
名誉博士号を授与されたザッカーバーグ氏が降りしきる雨の中、卒業生を前に行ったスピーチがインターネットで話題になっています。
故スティーブ・ジョブズ氏の伝説のスピーチ(スタンフォード大卒業式)に匹敵するという声もありますから、要注目です。