生ビールで盛り上がるビアパーティーで、ひとりだけがノンアルコールビールを手にしている。彼はアルコールが駄目な体質なので、仕方がないことでもある。
だけど、僕はどうも腑に落ちない。
とにかく、「おいしくない」!
ノンアルコールビールなんて、「ビール」とは称しながら、ビールであるような、ないような、中途半端な代物である。ビールの色はしているが、缶には「アルコール 0.00%」と書いてある。
アルコールが駄目で、ノンアルコールにするのなら、ウーロン茶を飲むとか、もっとまっとうなものを選んでほしい。ノンアルビールだと、飲めないのに飲めるふりをしているみたいでもある。いさぎよくない。
ノンアルビールで酔ったふりをされても、こちらはしらけてしまう。
僕が若い頃から出てきた宴席では、アルコールの飲めない先輩も結構いたが、彼らはウーロン茶や麦茶などのお茶でみんなの相手をしていた。
昔はノンアルビールがまだ一般的でなかったせいもあるだろうが、お茶だけで僕らの酔いに話を合わせてくれた。一種の芸当と言ってもよかった。
ちなみに、僕が大学生だった55年ほど前、運動部の合宿で訪れた自衛隊の基地の食堂で、初めてノンアルビールを飲んだ。まずかった。
この記事を書くにあたり、ビール各社の最近のノンアルビールを初めて飲んでみた。昔よりはよくなっているようだけど、うまいとは思えなかった。払ったカネが惜しくなった。
それもそのはずだ。あるノンアルビールの缶には「目指したのは、最もビールに近い味」と書いてある。最近は、ノンアルビールを「ビールテイスト飲料」と言ったりもする。裏読みすれば、「ビールの味にはまだ追いつけず、ビールよりはまずいんですよ」と、告白しているみたいである。
おまけに値段は、酒税がかかっていない割には安くない。開発費がかさんでいるせいとも聞くが、同じような値段の発泡酒のほうが僕にはずっとおいしい。
でも、スーパーあたりでは結構売れているようだ。大きく「ノンアルコール」と書いた棚が設けてあり、本来のビールと堂々、肩を並べていたりする。
子供に飲んでほしくない。でも、飲むなとは言いにくい
ビール各社のノンアルコールビールの缶を眺めているうちに、ちょっと不思議なことに気づいた。
「特定保健用食品」(トクホ)と称する一部のノンアルビールを除いて、申し合わせたように「この商品は20歳以上の方の飲用を想定して開発しました」と書いてある。「この商品は」のところだけが「当商品は」「この製品は」と、会社によって少しだけ違っている。
ノンアルコールだから、子供も飲んでいいはずなのに、なぜ20歳以上の飲用を想定して開発したのか。
想像するところ、ノンアルコールとはいえ、「ビール」と名づけている以上、子供には飲んでほしくない。何か面倒が起きるかもしれない。でも、飲むなとは言いにくい。そこで、ビール各社と役所が相談した結果、こんな回りくどい表現が生まれてきたのではないだろうか。
ビールとは本来、アルコール飲料のことである。そこに無理やり、ノンアルコールという意味が逆の表現をくっつける。「アルコール0.00%」で、ジュースと同じなのに、子供には飲まないように圧力? をかける。
ノンアルビールはしょせん、お天道様の下を胸を張って歩けるやからではないのである。(岩城元)
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