長時間労働や賃金不払い、パワハラ...... 過重労働を強いる劣悪な労働環境が話題にならない日がないほど、メディアをにぎわせている。
そんなブラック企業やブラックバイトの実態は、身をもって体験した人でないとわかりづらいかもしれないが、厚生労働省はこうした労働基準関係法令に違反して1年以内に書類送検された企業をリストアップしてホームページで確認できるようにした。
中堅・中小企業、全体の7割占める
厚生労働省が2017年5月10日に公表した企業リストには、全国の企業や事業所名、違反内容などを334件(企業数は332社)、各地の労働局ごとに記載している。なかには過労死問題のあった電通や、「違法な時間外労働を行わせた」パナソニック、「労災事故を報告しなかった」日本郵便など、誰でも知っている大企業の名前もあった。
ほかにも、
「労働者10名に2か月間の定期賃金合計約1349万円を支払わなかった」
「高さ約30メートルの屋上で手すりなどを設けず、労働者に足場の組み立て作業をさせた」
「資格が必要な業務に、無資格者を就かせていた」
「労働者が両足を骨折した災害について、災害の発生場所や態様などで虚偽報告した」
「外国人技能実習生を含む労働者7名に、違法な時間外労働をさせた」
「知的障害のある労働者3名に、最低賃金を下回る賃金しか支払わなかった」
など、深刻かつ、劣悪な労働実態が伝わってくる。
この公表結果を、東京商工リサーチが分析。業種別でみると、建設(34.6%、115社)や製造(22.8%、76社)、サービス業など(20.4%、68社)が全体の8割を占めた。金融・保険業は1社(0.3%)、不動産業は2社(0.6%)と、少数だった。
また、売上高が判明した244社のうち、売上高は「1~5億円未満」が最も多く31.5%、77社だった。「1億円未満」は23.7%(58社)、「5~10億円未満」は11.8%(29社)で、中堅・中小企業が全体の約7割を占めたことがわかった。
一方、売上高100億円以上の大企業は21社。最も規模が大きかったのはパナソニックだった。記載のあった企業のうち、16社が倒産、2社が解散していたこともわかった。
東京商工リサーチは、「業績悪化や資金力の乏しさが法令違反につながった可能性もある」と指摘している。
違反した法令でみると、労働安全衛生法が59.1%(211件)を占めてトップ。建設業や製造業が、現場での安全管理義務を怠ったことで事故が発生したケースが多かった。次いで多かったのは、労働基準法で17.6%(63件)。違法な長時間労働などで、電通もこれに該当する。