オープンしたばかりの「GINZA SIX(銀座シックス)」。皆さんはもう行っただろうか。銀座最大クラスの商業施設で、241もの「ラグジュアリーブランド」から能楽堂、オフィスまでが入った巨大なビルだ。
テレビや女性ファッション誌で特集しているので、「私も見ておいたほうがいいのではないか」という気持ちになり、先日ついに行ってきた。そこで見たのは、阿鼻叫喚の消費地獄であった。
エスカレーターで流し込まれて......
予想はしていたが、東京メトロ・銀座駅の階段を上がるともう、通りが人でごった返していた。交通整理のアルバイトと見られる男性2人が、必死に「正面入口はたいへん混雑しております!」「裏口のエスカレーターからお入りください!」と叫んでおり、入口すら拝むことができないまま、何の変哲もないエスカレーターで流し込まれた。
銀座シックス...... その時点ですっかり熱が冷めてしまい、もう帰ろうかと思ったが、流行りのものは一応見ておきたいと、どうにか気を取りなおして前進した。
店内はさすがに新しく(当たり前だ)内装も美しいが、とにかく人が多いので買い物どころではなかった。周りも皆そう感じたらしく、冷やかし程度で帰って行く人が8割。「ラグジュアリーブランド」ばかりで、手の出しようがないというのもある。
なんと、銀座最大らしいFENDIには、オープン記念の53万円(!)もするハンドバッグが売られていたのだ。
あんなもの誰が買うのだろうか。「セレリア ミニ ピーカブー」なるシリーズの「リミテッドエディション」。そのお値段が53万円也。開店祝いのプレミア感も手伝って需要が生まれるのだろうが、カバンひとつに53万円とはこれいかに。
「ピーカブーならそれくらいの価格が妥当だ、驚くほどではない」という人もいると思うが、好景気にありつけずにいる、少なくない人たちにしてみれば、銀座シックスでは何もかもがインフレを起こしているように見えたはずだ。
FENDIと、1億円のクロマグロ
築地市場の初セリでは、毎年クロマグロが異様な高値をつける。1匹「1億円」なんて年もあったが、あの高揚感みたいな空気に踊らされて、人は53万円の限定ハンドバッグを買うのだろうか――。なるほど、銀座のピーカブーは築地のクロマグロだったのか...... いや待てよ、クロマグロを競り落とした企業は、大きなニュースになるから宣伝広告費と思えばいいが、53万円のハンドバッグを見事ゲットした人は誰にアピールするのだろう。家族か、知人か、はたまたSNS上の他人なのか?
ソースティン・ヴェブレンという経済学者は、人々が自分をお金持ちに見せようと見栄を張る買い物を「誇示的消費」と名付けたが、53万円のカバンはまさに「誇示的消費」のために用意された道具ではなかろうか。
見せる相手がいないのなら、ブランドもののFENDIのピーカブーを買う必要はない。ちなみに後日、銀座シックスへ行ってきたヒモさん(私のパートナーである元ホストの男性)に「どうだった?」と聞くと、「うーん、床が綺麗だった」と感想を述べていた。あっぱれである。(北条かや)