長時間労働規制強化が「サビ残」誘発しないか
「電通過労自死事件」では、「語るべき7つのこと」を挙げている。そのひとつが「顧客や取引先、社内の他部署からの過剰な依頼にどう対応するのか」だ。亡くなった女性が働いていた広告業界の特殊性もあるかもしれない。だが筆者は「日本は消費者を含めてお客さんの言いなりになりすぎている」とズバリ切り込む。
批判の対象となった、いわゆる電通「鬼十則」に責任転嫁するのではなく、「いかに労働環境を改善するのか、取引先も含めて作り上げられている過重労働をどうするか。その議論が先だ」と主張した。
政府の「働き方改革」では、特に長時間労働是正に関する問題点として、その原因となる「業務量」「仕事の任せ方」に踏み込まない点を挙げる。これは改革ではなく「改善」にとどまっているというのだ。また長時間労働の規制を強化することで、かえってサービス残業が誘発されるのではないかと危惧する。
筆者は現在、千葉商科大国際教養学部で教鞭をふるうが、以前はリクルートやバンダイといった企業に勤務し、若手のころは休日出勤や月平均80時間の残業を何年も経験している。
自らの長時間労働体験に基づいた視点や提言が、本書では随所にちりばめられている。