「よい上司」は部下に責任を負わす 素直な「はい」のウラの顔を見よ

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「失敗が人を育てるなんていうのは大嘘」と言う社長

   そんな流れから、H氏の話を聞きながら思わず思い浮かべたのが、10数年の付き合いになるY社長です。十年一日の如く社長の口癖は、「うちの社員は本当に進歩がない」です。私が会社を訪ねるたび、決まって幹部社員を呼びつけては大声で叱咤しています。そして私の来訪に気づくと、たいていこんなことを話しかけてくるのです。

   「何度言ったら分かるのか。失敗が人を育てるなんていうのは大嘘もいいところだよ。うちの連中は失敗して、失敗して、さらにまた同じようなを失敗する。失敗して成長につながった試しなんて一度もありゃしない。素直だけが取り柄だけどね」。

   このY社長のボヤキの解決策にあたりそうなものも、H氏の話の中に出てきました。

「組織にイエスマンが増える理由、分かりますか? それは無責任な社員が増えているということなのです。要するに、社長がどんなことも自分一人で責任を被ってばかりいると、社員はたとえ失敗をしてもその場で怒られることさえ我慢すればいいと、本質的な責任を感じなくなるのです。そして責任を負わない気楽さに慣れてしまうと、なるべく責任を負わされることがないように今度は責任者である社長の言うことを、すべて受け入れるようになるわけです。こうして無責任なイエスマンができあがるのです。これを素直と勘違いしてはいけません。お分かりですか? 」

   「うーん、Y社長に聞かせてあげたかった」と、思わず心の中で叫びました。

大関暁夫(おおぜき・あけお)
スタジオ02代表。銀行支店長、上場ベンチャー企業役員などを歴任。企業コンサルティングと事業オーナー(複合ランドリービジネス、外食産業“青山カレー工房”“熊谷かれーぱん”)の二足の草鞋で多忙な日々を過ごす。近著に「できる人だけが知っている仕事のコツと法則51」(エレファントブックス)。連載執筆にあたり経営者から若手に至るまで、仕事の悩みを募集中。趣味は70年代洋楽と中央競馬。ブログ「熊谷の社長日記」はBLOGOSにも掲載中。
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