いまさらですが、社員の人事評価は「成果主義」を標榜する時代になりました。
その先鞭となったのが富士通。1998年に「目標管理評価制度」を導入しました。ただ、3年で全面的な見直しを余儀なくされたのです。
管理職になれないワケがある
富士通が「目標管理評価制度」の見直しに着手したのは、次のようなことが原因でした。
開発担当は失敗を恐れてヒット商品が出せない、ルート営業担当者は保守サービスに励んでも評価されないので、売上目的で保守点検の際に新商品をセールスして苦情を受ける...... さらに、仲間の業務をカバーしないために人間関係がすさみ、業績自体を悪化させた、と言われています。
それから、20年が経過しました。会社は成果主義と年功序列の重視を行ったり来たりしています。
つまり、正解はなく、時代の変化と共に刻々と人事評価は変わるものなのです。ですから、いまの会社で給料を上げたい、昇進したいと考えるならば、現在の人事評価をしっかりと理解することが重要なのです。
みなさんは会社の人事評価制度の手引きなどでルールを確認したことはありますか? そして、それを踏まえた行動、仕事の成果を目指していますか?
じつは、ほとんどの会社では、人事評価は書かれているルールに加えて、書かれていない暗黙知を併用して運用されています。書かれているルールで評価されるのが現在価値。暗黙知は将来価値を評価するために活用します。
ちなみに、現在価値はボーナスや昇給につながり、将来価値は昇進などのキャリア(進路)を定めることに用いられます。
たとえば、管理職の昇進をするための基準や人事異動のおける選考で活用されます。営業成績が高いのになかなか管理職になれない人の場合、現在価値は高いが、将来価値が低いと評価されているからなのです。
「どうして自分は管理職になれないのですか? 営業成績は高いのに。納得できません」
と、上司に不満を訴える人がいます。
ついには上司が自分を嫌いだから...... と言い出す場合もあります。でも、大抵の場合はそうではなく、将来価値が低いと評価されているのです。人事評価はそれなりに合理性があることは踏まえておきましょう。
「余力」のある人が昇進する
では、将来価値を評価するのは何か? ほとんどの会社では期待値が用いられます。さらにいえば、まだ余力があり、成長の余地があると思わせる姿勢。この「余力」の高さが昇進のスピードをあげて、期待の仕事を任せる基準になります。
仮に
「忙しくてパンパン」 「もう追加の仕事は勘弁」 「無理です」
と、余力のない状態に見えるなら、現在価値は高いかもしれませんが、将来価値が高いと感じることができるでしょうか? それは難しいはずです。
さらにいえば、「余力」は注目度がアップする時代になりました。働き方改革の時代になり、「また残業だよ」と時間的に窮屈な仕事で成果を出す人。あるいは忙しい自慢ばかりをする人。手帳やスケジュール帳にはぎっしりと予定が書き込まれ、「今日やることリスト」を細かく書き出して、チェックボックスが膨大な人。
将来価値の評価は相当に厳しいものなるのは致し方ないのではないでしょうか? 管理職への昇進が業績的には逆転現象になるなど、人事面で象徴的な出来事が当たり前に起きる時代になるはずです。
逆にいえば、いまの仕事で時間的な余裕を感じる人。もしかしたら、美しく泳いでいても、水面下で必死に水をかいている白鳥のような仕事ぶりかもしれません。でも、そうした姿勢を示せることが明確に求められることを理解しなければいけないのではないでしょうか?
少々脱線しますが、関西の人は挨拶で「儲かってまっか?」と尋ねられても、「ぼちぼちでんなぁ」と返します。東京の人からすれば返答に窮するかもしれませんが、こうした余裕のある姿勢や発言を意図的にしてみましょう。将来価値を高めたいのであれば、重要なアクションになるはずです。(高城幸司)