「辞めたい」は「辞める」を知るべし 優秀な部下ほど「決めている」(江上剛)

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その部下と、いつか美味しい酒を飲める日が来るよ

   先日、辞めた部下と一緒に飲みました。

   彼は、銀行時代に私の部下でした。営業部に行きたいと強く希望をしていましたが、彼の経理(国際経理)の経験を買われて経理部に異動になりました。私は、人事部や、部長に文句を言いました。そして彼に「希望通りにならなくて済まない」と謝りました。

   私は、彼を経理部に行かせたくなかった。その担当役員が、あまり好きではなかったこともあります。「辞めるなら、今だな」と私は、彼に言いました。

   彼は、その一言で、外資系金融機関に転職しました。営業部に転勤していれば辞めなかったのにと残念でしたが、新しい活躍の場を求めたことを心から祝福しました。

   今、彼は、若くしてその銀行の営業本部長という重責を担っています。生き生きとしていました。彼から「あの時、背中を押していただいたので今があります」と礼を言われました。「そんなことはない。君の努力の結果だよ」と私は答えました。とても美味しい酒でしたよ。

   あなたもその優秀な部下と、いつか美味しい酒を飲める日を楽しみにしてください。人生は、一期一会。惜しいと思うほどの部下なら縁も深いはず。また彼と会うことがありますよ。

(江上剛)

江上 剛
江上 剛(えがみ・ごう)
作家。1954年兵庫県生まれ。早稲田大学卒業後、第一勧業銀行(現・みずほ銀行)入行。同行築地支店長などを務める。2002年『非情銀行』で作家としてデビュー。03年に銀行を退職。『不当買収』『企業戦士』『小説 金融庁』など経済小説を数多く発表する。ビジネス書も手がけ、近著に『会社という病』(講談社+α新書)がある。
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