バチバチッと火花散る
向こうの「ちょいブス」は、私の外見を上から下までなめるように見た。そして、「ふん、女同士ではしゃぐんじゃないわよ。こっちはカップルで高級ディナーの最中なんだから、このブス!」とでも言いたげな相手を前に、私も心中で言い返す。
「そっちこそ、暗い店内で黒のドレスなんか着ちゃって、全然目立たなくてご愁傷さま! ここはカジュアルでもいいお店なのに(先輩の受け売りだけど)、カップルともども正装で張り切っちゃって恥ずかしい!」、と。
バチバチッと火花が散り、ちょいブスの自意識過剰っぷりが最高潮に達するなか、私たち女2人が案内されたのはなんと、レストランの中で1番いい席であった。
「勝った......! 」 向こうのちょいブスは入口付近の2人がけテーブル。こっちは夜景が見える窓際の4人がけテーブル。常連のバリキャリ×美魔女が同行しているおかげだが、私は完全に「勝利」を確信した。
イブニングドレスで張り切るちょいブスに、しまむらのブラウスで美魔女の威を借るちょいブスの私...... とはいえ、相手は彼氏とのデートで、プロポーズなどされている最中かもしれない。相手の男性は地味なタイプに見えるが、もしかしたらどこかの御曹司かもしれないではないか。そうなると、しまむらブラウスの私は劣勢だ。
両者の戦いは決着がつかない。そもそも不毛な自意識の争いなので当然である。
あとでこの話を聞いたバリキャリ×美魔女の大先輩は、「あら、そんな女性いたかしら? 全然気が付かなかった」と大笑い。やっぱり本物の美女は、周囲と自分を比べたりしないのだ。(北条かや)