「ジャパンディスプレイ(JDI)」と聞いて、イヤな顔をする個人投資家は少なくないはずだ。JDIは2014年3月に東証一部に新規上場。1株900円の公募価格に対して初値が769円。その後も業績の下方修正を繰り返し、株価は一度も公募価格を上回ることなく低空飛行を続けている。資金繰りに窮した2016年8月には138円の上場来安値を付けていた。
そんなJDI株を、「買ってみたら」などと戯れ言を叩こうものなら、罵倒されるかもしれないが、あえて言いたい。そろそろ、「買い」ではないか、と。
液晶パネル戦争の「負け組」
JDIは、スマートフォンやタブレット端末のほか、車載用機器、医療機器、デジタルカメラなどに搭載される、中小型のディスプレイパネルを開発、製造する。ソニーモバイルディスプレイと、東芝モバイルディスプレイ、日立ディスプレイズの3社が統合して2012年4月に事業を開始した。
そういうと、まるで日本の液晶技術の粋を集めたかのような会社だが、韓国のサムスン電子やLGディスプレイ、いまやシャープを傘下にもつ鴻海(ホンハイ)精密工業などとの低価格競争を繰り広げたあげく、あえなく「敗退」。液晶パネル戦争の、いわば負け組だ。
そんなJDIについて、2017年4月23日付の日経ビジネスONLINEの「ニュースを斬る」には、「JDI、液晶から有機ELへのシフトに『待った』」の見出しで記事が掲載されていた。
パネル業界の関係者の話として、「唯一の有機ELサプライヤーである韓国のサムスンディスプレーが、『売り手市場のため、有機ELパネルの価格を引き上げている』と言う。当初『上位モデルは今後すべて有機ELにしていきたい』としていたOPPO(中国の電機メーカー)にとって、この値上がりは大きな打撃。これにより、JDIの高精細液晶パネルの調達数を増やしているとみられる」としている。
この声に、JDI関係者が「液晶にもう一度注目してもらう契機と捉えている」と証言した、とあった。なるほど、風向きが変わったのかもしれない。
JDIが独自に開発した「フルアクティブ」と呼ばれる新型の液晶パネルの存在もある。液晶パネルのサプライチェーンメーカーと共同で開発したフルアクティブディスプレーは、狭額縁の4辺フリーパネルで、全面をスクリーン加工できるのが特徴という。
これにより、液晶パネルを2枚つなげても折り畳みの中間線が見えにくく、見開き型の大画面スマホをつくることも可能になるそうだ。
米アップルが関心寄せる新型の液晶パネル
しかし、JDIの「本命」はこれではない。現在、フルアクティブディスプレーの進化版として仕込んでいるのが、フレキシブルタイプの新型液晶パネルだ。米アップルに売り込んだ試作品も、この液晶を採用したものとみられている。
これは液晶の基盤に、ガラスではなくプラスチックを採用したもので、有機ELのようなフレキシブル性を液晶パネルでも実現することができる。有機ELほど湾曲させることはできないが、穏やかなカーブをつけた画面を成型できるとされ、2017年度上期にも石川県内の工場に試作ラインを設ける計画で動いている。
その一方で、米アップルの焦りが、JDIにとって追い風になりそうな気配がある。もともと、アップルは2017年の一部モデルに有機ELを採用。2018年に半数、そして消費者の反応を見つつ2019年には大半のスマホのパネルを有機ELに変える計画だった。
ところが、頼みの綱だったJDIも、韓国のLGディスプレイも、スマホ向け有機ELパネルの開発に苦戦。鴻海精密工業とシャープ連合も、「有機ELの需要は不透明」と慎重な姿勢を見せはじめている。有機ELの量産工程の難しさや、莫大な資金がかかることが懸念されているためだ。
サプライヤーのこうした現状から、「必ず有機ELでなければならない」としていたアップルの姿勢が少しずつ変化しているという。
このままでは、アップルは当面、スマホメーカーとして競合しているサムスングループに有機ELの調達を頼らざるを得ない状況が続くことになるからだ。
JDIが独自開発した新型液晶パネル「フルアクティブ」に、アップルが大きな関心を寄せているのはそのため。まだ本採用は決まっていないが、有機ELに固執していたアップルの姿勢が軟化してきたことは間違いないのではないか。
メーカーの企業買収や統合に伴い集約化が進んだことも、買う気になった、もう一つの要因だ。
リベンジのとき、来たる!
じつは過去、JDI株には痛い目にあわされた。初めて購入したのは2014年7月7日。619円で100株を購入。公募価格を3割下回っていたため、これ以上はそんなに下がらないのではないかと考え購入した。これが甘かった。
その後もさっぱり。350円~400円のあいだで、全株を売却。そのときは合計で17万円の損失(最大2000株を保有)を被った。
最近の株価推移をみると、240円近辺で安値安定。最悪でもさほど大きな損害にならないと考えた。それよりも、米アップルや中国勢からの受注動向次第で、株価は大きく動く可能性を秘めているのだ。
JDI株は、2016年8月1日の138円を底に、16年11月21日には400円まで戻したが、その後も相変わらず下がり続けている。そこで、株価の上限が268円(16年高値398円と16年安値138円の中間)~下限160円(16年高値398円の4割)のレンジ内なら、これまでの株価の推移から見ても割安ではないかと考え、「買い」のタイミングとみた。
2017年3月22日に262円で100株、27日には247円で100株を購入した。今後の企業業績と株価推移を見ながら、年初来安値の225円近辺での買い増しを、と考えていた矢先の5月2日には「Jディスプレイ赤字に」の報道に、朝一番で100株を成り行き注文で購入(取得価格228円)した。
5月10日の決算内容しだいでは、さらなる下げがあるかもしれない。(石井治彦)
2017年5月8日現在 300株保有 平均取得単価 264円57銭
年初来高値 2017/01/05 364円
年初来安値 2017/04/13 225円
直近 終値 2017/05/08 231円