今回はまず写真を見ていただきたい。東京都内の住宅街にあった電柱と電線、そして円筒形の変圧器である。
変圧器はどの電柱にもついているわけではないが、こんな「3点セット」は全国の至るところにある。皆さんはどうお感じになるだろうか。
醜い! 電柱、電線、変圧器の「三位一体」
電柱についている変圧器は、業界用語で「柱上変圧器」あるいは「柱上トランス」と呼ぶそうである。変圧器のほかに、箱型の「柱上開閉器」と称するものがついた電柱もあるが、これは小さいので、今回は見逃しておく。
美意識は人によってさまざまである。同じものを、ある人が「醜い」と感じても、別の人は何とも感じないかも知れない。でも、電柱、電線、変圧器の3点セットの景観を「美しい」と思う人は少ないのではないだろうか。
なかでも、問題は変圧器である。あんなに不格好なものが、あんなところに、なぜ、むき出しでくっついているのだろうか。もっと下のほうについていれば、まだましだが、上のほうだとなんとも不安定な感じがする。
中国での僕の日本語の教え子で、日本に留学して来た若者も少なくない。そんな連中から「先生、日本の『空』はなんとか、なりませんか。『クモの巣』のようで見苦しいし、変圧器が落ちてきそうで怖いです。日本は先進国でしょ? 」と訴えられる。僕は恥ずかしい。
僕が以前に住んでいた中国南方の大都市・南寧にも、電柱、電線は結構あったが、醜くは感じなかった。第一、電線そのものが目立たなかった。想像するところ、1戸あたりの電力の消費量が少ないせいだろうか、電線の本数が少なかった。
その南寧の変圧器は、僕が見た限りでは、日本のように電柱の上のほうについているのではなく、電柱からは離れて、地上から少し高いところに、四角い箱に入れられ鎮座したりしていた。醜いとはまったく感じなかった。あるいは、どこか目につかないところにも隠してあったみたいである。
まず、目立たない場所に置いてみてはどうか
2016年、日本では「無電柱化推進法」が施行された。災害時に電柱が倒れて「凶器」になるのを防ぐとともに、「良好な景観」をつくるのが目的で、電柱や電線の地中化に国、自治体や電力・通信事業者が責任を持つことになった。
朝日新聞の記事によると、電柱や電線の地中化率は東京都23区で7%、大阪では5%に過ぎないが、ロンドン、パリ、香港では100%、台北95%、ソウル46%、北京34%である。日本全体だと、地中化率はなんと1%しかない。
東京や大阪の地中化率はいつ、これらの都市に追いつけるのだろうか。じつは、日本政府はもう30年以上も前に「無電柱化」の計画に着手している。それなのに、いまだにこの体たらくである。
そこで提案したい。電柱や電線は地中化するに越したことはないが、しばらく我慢する。ただ、醜さが目立つ変圧器をなんとかする。当面、資金はそこに集中する。それだけで日本の「空」はかなりよくなる。
素人の考えだけど、たとえば変圧器にかっこいい覆いをつけたうえ、地上などのできるだけ目立たない場所に置く――。中国の例などを参考にして、いろいろ工夫できるはずである。2020年までとか、期限を決めてやってほしい。